内容説明
受難(パシヨン)を越えて、求めよ、自由を――。『熱源』で直木賞を受賞した著者による、新たな到達点! 禁教下における“最後の日本人司祭”となった小西マンショの人生を軸に、異文化同士の出会いと摩擦、争いの中での“希望”を描いた圧巻の歴史小説。キリシタン大名・小西行長の孫で、対馬藩主・宗義智の子として生まれた彦七(のちの小西マンショ)の運命は、関ヶ原の戦さによって大きく変わった。離縁された母・マリヤとともに彦七は長崎へ。キリシタンへの迫害から逃れてきた、小西家の遺臣らの世話になりながら成長していく彦七だったが、彼には小西家再興の重圧がのしかかっていく。キリスト教が禁じられ、信徒たちの不安が高まるなか、彦七はある重大な決断を下すのだが……。“受難の時代”を生きる者たちの魂の叫びが刻まれた、著者渾身の長編小説。 〈目次〉●序章 主の孫 ●第一章 天国の門 ●第二章 出日本 ●第三章 求めよ ●第四章 走る群雲 ●第五章 受難(パシヨン) ●終章 世の終わりまで
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
219
川越 宗一、4作目です。キリシタン迫害、受難(パション)の物語ではありますが、パッション(熱き血潮)が感じられた骨太の歴史小説でした。ここまで徹底的に弾圧したからこそ、泰平の江戸時代が続いたのかも知れません。 https://www.php.co.jp/news/2023/06/passion0702.php2023/08/08
パトラッシュ
160
同じ時代と人が登場するため、遠藤周作『沈黙』が想起される。ただ遠藤がキリスト教信仰をテーマにしたのに対し、本書は明日をも知れない世で激しく生きる人間ドラマが主眼となる。天下のためキリシタンを弾圧する井上政重も神のために生きる小西マンショも、互いの正義を信じて行くと決めた道を突き進む。悪と認めた相手を決して許さない正義がぶつかり合う過程で多くの人が巻き込まれ、死んだり殉教したり衝突を繰り返し、島原の乱を頂点に夥しい血が流れる。人とは何かにすがらずには生きられず、その弱さ愚かさを隠すため却って残酷になるのか。2023/07/24
hiace9000
149
幕府のキリスト教禁制が敷かれるなか、大弾圧に屈せず信仰を全うせんとした信徒、そして命を擲ち信徒を支えた司教ら。キリシタンの苛烈に過ぎた"受難(パシヨン)の時代"を丹念に辿り、史実を重奏的に紡ぐ。冷徹にして熱き川越筆は、今作でも史実の中道を貫いて描き、かの時代の群像がもたらした帰結と、それらが照射せんとする現代的解釈を読み手に委ねる。400星霜を経た今なお、人間の本質は何ら変わらずー。小西マンショの「いまだ!」は「未だ」である。真の泰平と自由を人にもたらすに必要なものとは何か、改めて自らに問うて黙考する。2024/02/23
のぶ
118
キリシタン弾圧の歴史が心に沁み込んで来る一冊だった。本作は、二人の人物がメインとなる。一人が、マンショ小西。小西行長の孫で、ローマへ渡ってカトリックの司祭となり、日本に帰ってきて布教活動に専念することになる。もうひとりが、井上政重。こちらは幕臣であり、キリスト教を弾圧することになる。宗教というものに真摯であるマンショ小西と、宗教を弾圧する側である井上政重。この二人を通して、宗教というものは本来どういうものであるか。人間らしく生きるためにどうすればいいのかということを十分に考えさせられた。2023/07/13
いたろう
69
江戸時代初期、キリスト教徒の受難の歴史。キリシタン大名、肥後宇土城主の小西行長は、関ヶ原の戦いで西軍側で敗れ、京で斬首された。キリスト教徒であり、主家をなくした小西家の家臣たち、そして、残された行長の孫、彦七。この小西彦七=小西マンショ、他にも、木村セバスチャン、岐部渇水、ミゲル・ミノエスなど、日本人司祭たち、日本で殺された西洋人司祭たちが、実在の人物であったことを後で調べて知った。これに、江戸城の書院番から、後にキリスト教徒を取り締まるキリシタン奉行になる井上政重がどう絡むのか。歴史の重みに圧倒される。2024/02/16
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