きしむ政治と科学 コロナ禍、尾身茂氏との対話

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きしむ政治と科学 コロナ禍、尾身茂氏との対話

  • ISBN:9784120056772

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内容説明

福島第一原発事故、さかのぼれば薬害エイズ、水俣病……。専門家による政府への科学的助言はいつも空回りした。このコロナ禍でもまた、政治と科学(専門家)は幾度も衝突した。専門家はその責任感から、自らの役割を越えて「前のめり」に提言したこともあった。
専門家たちは何を考え、新型コロナに向き合ったのか。政治と科学の間には、どのようなせめぎ合いがあったのか。そして、コロナの教訓を新たな感染症の脅威にどう生かすのか……。
尾身茂・新型コロナウイルス感染症対策分科会長への計12回、24時間以上にわたるインタビューを通じ、政治と科学のあるべき関係を模索する。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

116
新型コロナを巡る政治と科学の対立は世界で見られたが、尾身氏は日本で科学側の最前線にいて両者の調整役を務めた。専門家と政治家の最適解が一致しないのは戦争でも見られるが、試行錯誤の連続だった当時はまさに戦時といえた。国を平常運転しようとする政府と、感染拡大抑制を図る医学の間で最適解を見つけようとする苦労が改めて理解できた。中国のような厳格な封じ込め政策を採用できない日本で、パンデミック対策と日常維持の両立させる難しさはまさに綱渡りといえる。今回の体験を次の流行時に有効活用できるかが、政治に託された課題だろう。2023/11/24

kitten

18
図書館本。新型コロナ対応の先頭に立った尾身さんが、その時々でどう考えていたのか。特に、政治とのかかわり方に焦点をあてた回顧録、かな。私も医療者の端くれなので、ほぼ尾身さん側からの見方は理解できる。しかし、尾身さんのバランス感覚はとんでもない。日本が比較的最小限の被害で済んだ、一番の功労者は尾身さんだろう。つい最近、分科会会長からの退任が発表された。本当にお疲れさまでした。本書は、歴史書としての価値が高い。次のパンデミックに備えるべし。喉元すぎてなんとやら、ではだめだ。2023/09/05

メチコ

15
新型コロナと対峙した専門家たち。 そんなスペシャリストな集団のなかからMVPを選出するのであれば、やはり尾身先生なのかな…と。 未知のウイルスに対して皆が皆、100%納得する答えなどあるはずもなく。 それでも政治家と専門家、政治判断と国民感情、医療と経済、理想と現実、理性と感情…すべてを俯瞰し、よりベターな方向性を冷静に示していく、そんなバランサーとしての能力がずば抜けているように感じるのよね。 尾身先生がいてしまったがために、専門家集団が逆に悪目立ちしてしまった部分もあるのかもしれないんだけどさ。2024/01/19

みじんこ

7
コロナ禍の始まりから5類移行まで、尾身氏へのインタビューをもとに振り返る。専門家集団として言うべきことは言わねば歴史の審判(なぜ提言しなかったのかという後世の指摘)に耐えられないという点を重視した場合もあり、使命感を持ち対応したことも分かる。専門家が対策を全部決めているかのように、一方で政府案の追認機関と化しているかのように見えていたのは一面として自分も感じていた。責任の所在問題と、お互い譲れない点のせめぎ合いの息遣いも感じられる証言。医療逼迫の原因や政治の役割など、次なるパンデミックへの課題が見える。2023/08/15

お抹茶

5
このインタビューを読むと,矩という言葉が頭に浮かぶ。大変苦労された方だと思うが,政府・官邸の論理もわかったうえで,特定の人や組織への批判を避け,その時々の意思決定の舞台裏を語り,国と自治体と専門家の関係やリスクコミュニケーションも課題を挙げる。「ここで何も言わないと、『歴史の審判に耐えられない』」という思いが何度も去来する。「官邸VS専門家」という帯は少し誇張している。科学者としての矜持を保ちつつ,有事においてスピード感と柔軟性を実現する難しさ,政治や世論に翻弄させる苦労を,抑制された口調から感じる。2023/09/03

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