内容説明
疫病対策に礼拝されてきた嵯峨天皇宸筆『般若心経』から、日本におけるその受容と展開を解き明かし、あわせてそこに共通する空海の『般若心経』観についても論じる意欲作。
感想・レビュー
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kenitirokikuti
10
コロナ禍下に天皇が誕生日会見にて嵯峨天皇宸筆『般若心経』(大覚寺)に触れている。空海の般若心経秘鍵の上表文が宸筆の根拠なのだが、その上表文自体は後世(12世紀前半の)偽作だそうな。空海自身は般若心経に疫病や日照りに特化した功徳があるとは書いていないのだが、そういうものとして定着してしまったそうな。17世紀までは国家鎮護的なものだったが、18世紀の光格天皇ごろになると、皇族などが個人的な病気快癒のため用いられはじめる。宸筆般若心経のカバーが薬師如来か何かで、その巻物を少し切り取って飲まれたりしたようだ2023/11/26