内容説明
同じ地方都市に生まれ育ち現在もそこに暮らしている3人。4歳の娘を育てるシングルマザー、朱音。朱音と同じ保育園に娘を預ける専業主婦、莉子。マンション管理会社勤務の独身、園田。いじめ、モラハラ夫、母親の支配。心の傷は恨みとなり、やがて……。「生きる」ために必要な救済と再生をもたらすまでのサスペンス。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
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『十代の頃って、人生でいちばん良い時代だよね』。そんな問いの答えに『いちばん良い時代じゃなかった…』と答える主人公。この作品では、園田、莉子、そして朱音という三人の主人公達が、中学時代に負った傷に癒されないままに大人な今を生きる様が描かれていました。まさかの”黒テラチ”な展開に新鮮な読み味を感じるこの作品。それでいて三人の主人公達の心の機微を丁寧に掬い取っていくいつもならではの寺地さんの筆致に安堵もするこの作品。まさかの”寺地はるなのサスペンス”にこの作品にかける強い意気込みを感じた素晴らしい作品でした。2023/08/22
starbro
362
寺地 はるなは、新作中心に読んでいる作家です。 日立市のような企業城下町を舞台に、閉塞感の中で生きる市井の人々の群像劇、読み応えはありますが、今読みたいストーリーではありませんでした。 https://www.shinchosha.co.jp/book/353192/2023/09/06
fwhd8325
275
寺地さんのサスペンスと聞いていましたが、なかなかイメージがつかないでいました。率直な感想として、とてもスリリングな物語でした。言葉少なに映像化してくれたら、とても面白いものなると思います。誰でも心に闇をもっていることを、こうした表現で描いた寺地さんの新境地ですね。私にとっても刺激的な読書になりました。2023/12/09
hiace9000
259
"黒"寺地との評もある本作。だが私は、これまでどんなピースも嵌まらなかった心の凹みに、次から次に言葉が収まる気持ち良さを感じた。黒なのか、否、何気ない言葉に潜む、善意や常識に擬態した真意や悪意を炙り出す、より深化した寺地ismなのだ。小さな子ども同士の諍いを「ごめんなさい-いいよ」ごっこで解決したかのように暗示をかける大人のまやかし。「希望溢れる言葉」では救われない孤独感と疎外感。心の傷と向き合い「ひとりで立つ」ことをどう捉えるべきかー。読後直ちに再読した初めての作品。私のなかのわたしに出会えた一作だ。2023/11/03
kotetsupatapata
224
星★★★☆☆ スクールカーストにモラハラ夫、さらには殺害願望やらと冒頭から不穏な空気に包まれ、いつもの寺地さんの作品なら、「きみには翼がある、雲に届くよう高く飛べ」と言った浜田先生のような人と、手を携えて前向きに歩いていく作品が多かったですが、今作はその手を振り払い、地べたを這いつくばっていく生き方を描いた「黒テラチ」作品。 スッキリとしないラストに、どうコメントしたらよいか難しい作品でしたが、三人が選んだ今後の道のりに障害物が無い事を祈りたいと思います。 人間なんてみんなどこかちょっとずつおかしなもの2023/11/28