内容説明
ウクライナへの全面侵攻で世界に衝撃を与えたロシア。なぜ国際法を無視し、蛮行を続けるのか? その背景には、ソ連時代に国家の根幹を掌握し、かつてプーチンも所属した諜報機関「KGB」と、ロシア連邦でそれを継承した「FSB」がある。ウクライナで近年公開されたKGBの極秘文書、反体制派やハッカーによるリーク情報、最新のインテリジェンス研究から、「諜報国家」ロシアの社会構造と行動原理に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
66
ソ連からロシアへと変わっても、その本質は依然として警察国家であることを暴いている一冊。最初にGPUからKGBの歴史と部局を説明し、次いで彼らが如何にしてソ連崩壊を乗り越えてさらにはその力を増したのかという経緯、そして戦術や手法、世界観が余すところなく説明され、その微に入り細を穿った内容はとても新書とは思えないほど。特に世界観の部分を読むとウクライナ侵略後の妄想としか言えないようなロシアの発言がはっきりしてくるな。自称知識人が如何にロシアに取り込まれるのかも含め、ロシアを理解するに必須の一冊だと思う。2023/09/07
よっち
41
ウクライナ侵攻で世界に衝撃を与えたロシア。なぜ国際法を無視し、蛮行を続けるのか?近年公開されたKGBの極秘文書、反体制派やハッカーによるリーク情報、最新のインテリジェンス研究から迫る一冊。諜報国家ロシアの社会構造と行動原理の背景には、ソ連時代に国家の根幹を掌握し、かつてプーチンも所属した諜報機関KGB、ロシア連邦でそれを継承したFSBがある。そのKGBの組織の誕生からどういう体制だったのか、体制変換して生き残った組織と変わらない伝統、そしてメディアと政治に入り込んだその影響力の大きさを改めて実感しました。2023/11/07
みこ
41
諜報国家というタイトルが実にいい得て妙である。ロシアという国家の諜報機関についての解説ではなく、ロシアという国家が諜報機関によって成立していることを明かしてくれている。更に言えば、国家の国益というよりプーチンの私益に反するものを除外するための組織になっている。ウクライナとの関係も昨日今日の話ではなく、ソ連が解体した時に既にロシアはウクライナを仮想敵国として諜報していた。事象ロシア通の人の意見ほど怪しいものはないと感じさせられる。2023/08/19
Tomoichi
37
いやーロシアってすごいね。日本は太刀打ちできない。っていうのが読後の感想。ロシア革命後のソビエトロシアからの諜報について語られるが当然ロシア帝国時代から秘密警察があり日本とはその年季が違う。それを受け入れる国民の精神性にも興味が出てくる。対日本で考えれば保守系も含めマスコミや学者というのはロシアの片棒を担いできたことがわかるし現在も続いている。本書を読んで我々日本人もロシアやプーチンを見て行かなければ国益を失う。反戦を題目のように唱えてもご利益は無い。2024/03/24
kan
34
怖い本だった。ロシアの諜報活動のきめ細かさと、長い伝統に裏付けられた確かな方策と研究の深さに感心してしまった。政界やメディアに自然に入り込むだけではなく、気がつかないままuseful idiotになる怖さはロシアだけではなく米国もそうだと思う。ただ、米国はエンタテインメントや交流事業などソフトパワー含めてやり方が洗練されている。本書を読むと、ロシアの行う組織的な工作活動の複雑さに驚き、日本を憂い、正義とは何なのか考えてしまう。誰がどこで何を言っているのかよく見きわめたい。2023/09/26