内容説明
インセル、#MeToo、オンライン・ポルノ、セックスワーク、監獄主義――誰を求め誰に求められることを欲するか、欲望には個人の好みを通じてあらゆる抑圧が根を張っている。性の政治をめぐる複雑な問題にとどまり、フェミニストがセックスについて考え語ってきたことを緒に、21世紀フェミニズムをリメイクする。特別解説=清水晶子
目次
まえがき
男たちに対する陰謀
ポルノについて学生と話すこと
セックスする権利
コーダ――欲望の政治
教え子と寝ないこと
セックス、監獄主義、資本主義
謝辞
解説[清水晶子]
訳者あとがき
原注・訳注
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
148
レイプ告発の不平等…例えば黒人男性を暴虐、黒人女性を奔放と見なす風潮がそれだ。法の限界を痛感した。また今の子供のメディアを介した性体験と、エロ本が想像力の源だった昔との違いも目から鱗だった。女の子が男の子から「お前のやり方は違う」となじられた性体験に著者は注目する。ポルノを真に受ける傾向は男子に顕著だと。今の時代、エロ動画が性教育を遙かに上回る権威と力を十代に及ぼし、そこには想像力の入る余地のない父権制の罠があるとする。父権制と人種差別の手段だった排他的監獄主義にフェミが傾くことの危うさ…この指摘も重い。2026/06/14
katoyann
19
イギリスの哲学者によるフェミニズムの研究エッセイ。表題は、インセルが主張する権利の是非について問うた論稿である。6人を無差別に殺害したエリオット・ロジャーの主張を取り上げながら、性愛にアクセスできないという状況については、欲望の構造を変化させる運動で抵抗すべきと解く。例えば、肥満体型は、性愛の対象と見做されにくいが、セルフ・ラブ運動は自らの肉体を貶めることなく、肯定的に読み替えていく試みである。モテるという規範に合わせようとすればするほど、ジェンダーの秩序が強化されてしまうという訳だ。面白かった。2026/06/21
die_Stimme
8
バーレーン出身で、女性・非白人として最年少でオクスフォード大チチェリ口座教授に就任した哲学者による、フェミニズムエッセイ集。とても大事なことが多く書かれているが咀嚼しきれていない。タイトルで損している気もする。自分にもセックスする権利があるはずなのにできていないと思い込み女性に怒りを燃やして連続殺人をしたある男性の発言からタイトルは取られている。むしろ著者はセックスする権利などというものはないという立場。そこにはルッキズムや非モテ男性の欲望など日本でもおなじみの問題が絡んでくる。2023/05/22
かす実
5
誰も排除しまいと、難しいところに留まったまま思考し続ける誠実さ、今っぽいフェミニズムだなと思う。「セックスする権利」というタイトルはインセルの主張のことで、それは本当に存在するのか?という問い。欲望は政治的なものであある、とすれば、欲望を(単に規律的な方法でなく)変化させることは可能だろうか。よくツイッターでも言及されている「教え子と寝ないこと」の章は確かに面白い。セックスワークをめぐるフェミニズム内の対立については、象徴を重視するか現実を重視するか、という分析で、かなりわかりやすかった。2024/01/14
中村
5
とりわけ関心を持って読めたのは、第6章にあたる「セックス、監獄主義、資本主義」だった。資本主義批判とフェミニズムは切っても切り離せない関係にあると思う。著者も「問題はフェミニズムが労働者階級運動になれるかではなく、労働者階級運動がはたしてフェミニズムにならずにいられるのか、である(p. 245)」と述べる。あと、おそらく僕以降の世代の初めての性体験は「画面の前」であることに気にも留めていなかったのでインターネット・ポルノに関するセクションも興味深かった。2023/08/06
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