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内容説明
こころと向き合うすべての大人に響く、悩める文豪による迫真の短篇! 世話になった屋敷の娘との別れ際、どうも心が動かない青年を描く「ヴェーロチカ」、精神科病棟の患者とのおしゃべりに愉しみを見出すも周囲との折り合いが悪くなっていく医師を描く「六号室」など、作家としての転換期の最中、人間の内面を深く覗き込んだチェーホフならではの傑作を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
79
『六号室』が印象に残りました。病院の乱脈で劣悪な状態を変えようとせず、「暖かで静かな書斎」に籠っていた医師が、自身が病棟に入ることになって初めて20年以上も知ろうともしなかった「生活」、暴力や空腹に打たれて破滅する物語で、作者は本書所収の『流刑地にて』でも社会や生活と戦わず、何も期待しないことで日々をやり過ごそうとする人物に「お前は生きていない」という言葉を浴びせていますが、ここにあるのは『ワーニャおじさん』で示された、人間はどんなに苦しくても生きねばならないというメッセージとも通底するように思いました。2024/02/02
星落秋風五丈原
30
『カシタンカ』 ダックスフントとお屋敷の番犬の雑種カシタンカは、指物師ルカー・アレクサンデルの家族と暮らしていたが、町ではぐれてしまう。 もし、カシタンカが人間だったら、こう考えていたに違いない。 「だめだ、これでは生きていけない!猟銃自殺でもするほかない!」(p45) などとチェーホフは書いているが、いえいえカシタンカもうちょっと現実的だったようですぐ新しい飼い主が見つかる。おばさんと呼ばれてもカシタンカはご飯さえあればご機嫌。とはいってもこの飼い主、何だかヘンである。さあカシタンカの運命は?2024/02/21
tharaud
5
収載されているのは暗い作品が多いが、解説に書かれているように、思えばたしかにチェーホフの多くの作品で「内面の空虚」が描かれているように思う。もう一冊、どうやら古典新訳文庫から出るようだ。楽しみにしている。2023/11/12
あと
3
短編集。退屈な話し、という短編が一番良かった。百数十年以上前の物語で国も環境も全く違うが、人間は同じようなことを考えるのだなと思った。古くささを全く感じなかった。1ミリも、などと今時の表現もあったり、読み易い翻訳に感謝。同じ翻訳者の作品が読みたくなった。2023/07/07
ふら〜
3
チェーホフ短編集。やはりこうロシア文学的な陰鬱とした感じが心に響くな。全集買うか、と思うくらいには個人的には好きな作家かもしれん。訳文が読みやすいのもある。2023/06/21