- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
なぜ熊楠は完成を嫌ったのか?
驚くべき才能を多方面に発揮しながら、
その仕事のほとんどが未完に終わった南方熊楠。
最新の研究成果や新発見資料をとりあげながら、
熊楠の生涯を辿り、
その「天才性」と「未完性」の謎に迫る!
<熊楠をめぐる13の謎>
・十数年前にとったノートの内容をそらで思い出せる記憶力
・51篇も論考を発表していた「ネイチャー」への投稿を中止
・渡英後、熱中していた植物学の研究を停止
・大英博物館に迎えられてから、何をしていたのか
・語学の天才・熊楠の勉強法とは?
・「エコロジーの先駆者」だが、数年でフェードアウト
・なぜ「希少な生物」だけでなく「ありふれた植物」も守ろうとしたのか
・「人類史上、もっとも文字を書いた男」と呼ばれる理由
・どうして一度も定職に就かなかったのか
・ともに民俗学の礎を築いた柳田国男と喧嘩別れ
・変形菌(粘菌)の新種は発表したが、キノコの新種は未発表
・なぜ夢の研究を長年続けたのか
・集大成となるような本を、どうして出版しなかったのか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
41
「知の巨人」と称された博物・生物・民俗・生物学者の南方熊楠氏。氏の業績にスポットをあてその全貌を追うノンフィクション。名前のみを知っている程度の知識だったが、「人類史上、もっとも文字を書いた男」、膨大な書物の抜書きと抜群の記憶力等、氏の天才的でユニークな人生が知れたことが収穫。柳田国男氏や牧野富太郎氏らとの交流にもふれられる。南方、牧野両氏ともなかなか個性的でクセ者の印象。周囲に遠慮していては抜群の業績を残せないのだろう。2023/09/22
道楽モン
32
国内の学会に背を向けた孤高の研究者・南方熊楠の概要を知るには恰好の入門書。明治25年にイギリスに渡り、大英博物館を根城に、膨大な文献を手書きで写し取り、膨大な知識を獲得するに至った。当時、論文誌『ネイチャー』での最大の寄稿者となり、日本と中国の専門家として確固たる名声を築いていたことに驚かされる。しかしながら熊楠の巨大な勉強に対するエネルギーは、論文を仕上げ、大学にへの求職を目標にしたものではない。純粋な知識欲と好奇心を原点に、一生を研究身を委ねた、まさに孤高の人。この人生は後世に希望と影響を与えるのだ。2023/10/19
BLACK無糖好き
21
南方熊楠は頭抜けた天才との印象があったが、とりわけ記憶力が桁違いだったようだ。百科事典など膨大な量の文献を書き写して知識を増やし、どこに何を記したかを自在に思い出せるという。書くことによっていくつもの語学にも挑戦したとのこと。ただ、南方熊楠はいくつかの分野の研究に没頭はしたものの、どれも未完に終わっている点に著者は注目している。何かしらの研究成果を求められる立場でもなかったようだが、そもそも研究には終わりがないということなのだろう。「未完」という言葉にある種のロマンを感じさせる。2024/07/01
美東
21
熊楠入門書。「未完の天才」とは言いえて妙。 研究三昧 幸せな人生2023/10/09
あきあかね
19
語学の天才、エコロジーの先駆者と呼ばれ、民俗学、人類学、植物学など文理の垣根を超えた多様な分野を対象とし、ネイチャーなどへの論文の投稿によって国際的にも名を馳せた南方熊楠。その研究の多くは「未完」のままであったが、膨大な抜書に見られるように、インプットの尽きせぬ情熱には驚かされる。完成したアウトプットのみを重視し、細分化された狭い分野での論文執筆に追われる現代の学会の風潮とは対照的に、広く万物を知ろうとする、真の意味での「博物学」を追い求め、自由に知の空間を泳いだ熊楠は、まさに知の巨人と言えるだろう。2024/03/16
-
- 電子書籍
- 銀の匙 古典名作文庫