内容説明
卵生生物の生殖をケアする”孵化コーポ”でバイトする美大生のうみは、才気煥発な同級生みみが抱える「生まれたくなかった」意志に触れ――。中原中也賞受賞の気鋭の詩人による初小説集
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
kana
17
世の中であまり言語化されないマイノリティの命・性に対する感覚を、詩的に描いた美しい物語です。性行為に対する嫌悪感。人が人を産むということへの嫌悪感。同時にそういったことへの湧き上がる興味関心と義務感。作品としても作品内でもそうした感情は創作表現へと昇華される。タイトル「うみみたい」に多層的な意味があり、現代の多様な共存関係を前提にした「月がきれいですね」的な愛のメッセージなのがぐっときました。人間のような人間でないものがでてくる他の短篇は初期の川上弘美さんの作品のSFっぽさに通じるものを感じます。2025/11/03
K
14
表題作含め4編。水沢なおについては、詩を読んでから気になっていた。今回は小説のスタイルだが、文章も綺麗、輝いている気がした。どうやったらこの言葉が出てくるのか?と思うこともしばしば。反出生の考えを持った登場人物みみの気持ちは一度通ったことがある(すでに半ば通過しているけど。)自分が生まれたくなかった方のものと、今後誰も生むべきではない、という二つの問題が重なっているような感じはあった。生命の不思議さ、偶然性、残酷さ、虚しさ、などが詰まっていた。2023/12/29
🌙🐟
4
美しい文体で描かれる、反出生主義。わたしもそういうきらいがあるので、共感できる箇所は多々あった。特に、英語の先生が妊娠したというくだり。うみとみみの恋でも愛でもない強い関係性、とても素敵。増えなくていい、二人で一つでいい。2023/05/05
Yukipitasu
3
「うみみたい」ミュウツーが度々出てくる(P40,p48,p50)。誰が生めと頼んだ!誰が造ってくれと願った…!!と生み出された事への反出生的な怒りを見せるミュウツーが人間の都合でぬいぐるみ等のグッズが大量生産されるなんて考えてみれば皮肉だな。資本主義とミュウツーって相性悪いな。 ミュウツー3体!?でも自分も配布とかゲーム内で捕まえられるの合わせたらそれくらい余裕で超えるか。 「生殖する光」ずっと苦しい、現象として生まれたかったって言うとるくせに直後にふえたいって言うの何よ。ふえんなふえんな2023/07/02
N
2
反出生主義という言葉を聞いた事があるけれど、それに近いような、自分や人間の誕生・生殖・あるいは恋愛までも忌み嫌う価値観があくまで抽象的でふわっとした文章で書かれていた。 文章全体が詩のようで掴み所のない雰囲気だけれど、その中で綴られている反出生的な観念はむしろかなり強固なもののように感じた。 様々な立場の人が尊重されるようになっている今の時代にそんなに声を荒げてアンチナタリズムを掲げなくともいいのではないかとも思ったけれど、著者は他人や人類全体のそれすら許せないのだろうか…。 とにかく強い信念を感じた。2023/05/25
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