経済兵器 現代戦の手段としての経済制裁

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経済兵器 現代戦の手段としての経済制裁

  • ISBN:9784296001064

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内容説明

「ロシアによる突然の、いわれのない大規模なウクライナ侵略は、侵略に対する武器としての制裁の本来の目的を今日的なものにした。二〇二二年二月以降、英米とヨーロッパ連合(EU)だけでなく、日本、韓国、台湾、シンガポールといったアジア諸国や、さらには長年の中立国、スイスを含めた三八カ国の連合による措置は、領土の保全という国際連盟の本来の目的に起源がある」(日本語版への序文より)

 経済制裁は、国際平和を乱した国への懲罰メカニズムとして、近年、多用されてきた。この経済制裁は、第一次世界大戦後の国際秩序を構築する中で誕生したものだ。当時、経済制裁は「経済兵器」とも呼ばれていた。というのも、大戦で敗者となったドイツ帝国やオーストリア=ハンガリー帝国、中東などで経済制裁が多くの餓死者をもたらした生々しい記憶を伴っていたからだ。
本書は、第一次大戦後から第二次世界大戦勃発までの30年間に、どのように経済制裁が生まれ、現代のような形に発展してきたのかを英米仏の制裁主義者、国際主義者らの議論や各国の思惑を膨大な資料をもとに、気鋭の米国人歴史学者が描いたものだ。 ロシアも自国資源の石油、ガスを武器にして、中国などと連携する動きを見せるなど、ウクライナ戦争が「経済戦争」の様相も呈している中、これからの世界経済を考えるうえで必読書といえる。

目次

日本語版への序文
国際的な政策立案と組織構築における壮大な実験としての「経済制裁」
ニコラス・ミュルデル
序論 戦争よりも凄まじきもの
第I部 経済兵器の起源
第1章 封鎖のメカニズム
第2章 封鎖の精神から生まれた制裁
第3章 平和の戦争
第II部 経済兵器の正統性
第4章 経済兵器の射程
第5章 ジュネーヴの世界警察
第6章 制裁主義vs. 中立政策
第III部 戦間期危機下の経済制裁
第7章 侵略に対抗する集団安全保障
第8章 現代史上最大の実験
第9章 封鎖恐怖症
第10章 供給型経済兵器
結論 対抗手段から別の選択肢へ

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

takao

4
ふむ2024/05/12

ゼロ投資大学

2
「経済兵器」としての経済制裁の焦点を当てて議論を進めていく。第二次世界大戦以降に、核兵器の登場によって大国間の衝突は世界の破滅を意味するようになったため、相手国にダメージを与えるために経済制裁が使われる頻度が増えた。近代に入ってから登場した概念だと思われがちだが、その歴史は古くに遡る。2023/11/11

yes5&3

2
第一次世界大戦に英仏側が独等に使った経済封鎖。経済制裁の約百年を、1919年国際連盟(自体は評価が低い)の第16条に着目する著者独自の切り口。平時の抑止力か、いや、民間の女子供から先に命を奪う経済兵器か。英仏の制裁主義に反対し国際連盟から抜けた中立主義の米国フーバー大統領。世界恐慌のローズヴェルト大統領へ経てもっとも制裁を利用する国へと変容。弱者から先に命を奪う場合や効果なく戦争拡大する場合、禁輸か武器支援か等の議論がされない21世紀。ロシアのウクライナ侵攻で考慮すべき経済制裁の多様な視点を与えてくれる。2023/10/14

Tatsuhiko

0
かなり難解だったし、翻訳も頑張ってるとは思うが読みやすいかと言われるとどうかという印象。経済制裁を課すだけで第二次大戦を止められなかった国際連盟は無能という評価はやはり事後的なもので、第一次大戦中に用いられ始めた本格的な経済制裁には銃後の市民に大量死をもたらし、後世の国民にも影響を及ぼすという恐ろしいイメージがつきまとっていた。ただ実際の運用となると軍事力のバックアップや米国の中立主義が効果を左右した。現在の対ロ制裁でも中印などの中立陣営が抜け穴になっており、そういう部分は示唆的でもある。2023/10/09

ふら〜

0
WW1からWW2にかけての時代における経済制裁という手段がどのように考えられ、期待され、活用され、何が不十分だったか、その変遷を辿る。国民の生活を破壊し将来の人口を減じるそのインパクトから当時の毒ガスのような新兵器よりも究極の武器と考えられていた側面があるというのは興味深い。2023/07/25

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