ちくま新書<br> B‐29の昭和史 ――爆撃機と空襲をめぐる日本の近現代

個数:1
紙書籍版価格
¥1,078
  • 電子書籍
  • Reader
  • ポイントキャンペーン

ちくま新書
B‐29の昭和史 ――爆撃機と空襲をめぐる日本の近現代

  • 著者名:若林宣【著者】
  • 価格 ¥990(本体¥900)
  • 筑摩書房(2023/06発売)
  • 夏休みの締めくくり!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~8/24)
  • ポイント 270pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480075604

ファイル: /

内容説明

B‐29――太平洋戦争を描いた作品には必ずと言っていいほど登場する戦略爆撃機である。1940年代初頭に開発され、当時としては破格の5000キロメートル以上の航続距離を誇ったこのアメリカ軍の長距離重爆撃機は、1944年以降本土空襲を繰り返し、広島と長崎に原子爆弾を落とした。模型や爆音レコードが販売される戦時下の“人気コンテンツ”となったB‐29は、今も『火垂るの墓』などを通して知られている。B‐29はいかにして、太平洋戦争そのものを象徴する存在になったのか。豊富な資料から読み解く、B‐29と日本人の歴史。

目次

はじめに/I B‐29の誕生/第一章 「戦略爆撃」という思想/飛行機の軍事利用がはじまる/ヒュー・トレンチャードの台頭/戦略爆撃思想の芽生え/ミッチェルと第一次世界大戦/飛行機が戦艦を沈める/ミッチェルが遺した戦略爆撃思想/精密爆撃と無差別爆撃のせめぎあい/第二章 B‐29の誕生まで/モノコックボディとジュラルミン/アメリカ軍の重爆開発史/同じころの日本海軍は/日米航空機開発の懸隔/B‐29の開発へ/対日空襲の決定/インドの基地でデビュー/初陣、そして北九州爆撃/II 戦前日本の空襲観/第三章 飛行機が帝国を表象する/黎明期の日本飛行機産業/モダンで尖端的なイメージの時代/空中戦イメージの形成/神風号ブーム/軍歌の時代へ/国策と報道と飛行機/世界に羽ばたくニッポンから「空の帝国」の終焉へ/第四章 海野十三と防空小説/海野十三に対する評価をめぐる問題/「防空小説」の担い手、海野十三/橋本哲男による評価の問題/海野自身が熱をこめた「警告」/関東大震災と海野十三/流言と「スパイ」/『空襲警報』に見るスパイと井戸/水野広徳との比較/海野十三を論じる姿勢について/第五章 日中戦争における空襲観/国際法から見た空襲/「暴支膺懲」という大義名分/或る新体詩人の重慶空襲/振り下ろされる天皇の「火」/爆撃をおこなう眼/III 本土空襲/第六章 日本本土空襲のはじまり/初空襲は航空母艦から/甘い情勢判断/一号作戦とサイパン島陥落/北九州空襲のB‐29はどう報じられたか/〈敵の炎〉と神国日本/サイパンに大型機の展開能力はなかったか/B‐29のコンテンツ化が進む/子ども向け記事に見るB‐29/第七章 B‐29、東京上空に現れる/東京上空にきらめくジュラルミン/整備兵が見上げた「目にもすばらしい敵機」/警防団員に追い立てられた徳川夢声/地下室にい続けた古川緑波/目にできなかった伊藤整/初日は見なかった吉沢久子/八代目正蔵の緊張/物騒を心配する内田百〓/谷崎潤一郎の印象/B‐29による最初の東京空襲/第八章 体当たり攻撃をめぐって/八幡空襲邀撃から引き出された戦訓/北九州上空の体当り/「体当たり」を絵で崇める/揉める帝国議会/流行する「体当り」/対B‐29特攻のはじまり/「死」を待ち望まれたパイロット/第九章 振りまかれる恐怖/警視庁カメラマンが見た空襲直後の銀座/伊藤整が体験した銀座空襲/墜ちてくる機体の恐怖/東京大空襲の夜の距離/原爆投下/原子爆弾の後のB‐29/第一〇章 B‐29搭乗員の処遇/終戦当日の空襲/段階的に出された停戦命令/「終戦」により引き起こされた反動/捕えられた搭乗員の扱い/捕虜扱いをされない「捕虜」/終戦の日に行われた虐殺/救援物資投下にともなう事故の発生/IV 戦後のイメージ形成/第一一章 敗戦から占領期の語り/夢声、B‐29の向うに戦勝国男性を見る/老ジャーナリストが西洋を見てとったB‐29/ある教育者の反省/カナモジ論者・経営管理研究者の苦言/建築学者が観察した空襲と戦災/造船技術者のB‐29評/子どもの世界にしめされるB‐29/アメリカに対する感嘆と乏しい反省/第一二章 アメリカの基地として/朝鮮戦争の勃発/波及した事故/冷戦における撃墜事件と日米行政協定/貸本漫画の隆盛/やられ役としてのB‐29/B‐29がたどった道/第一三章 野坂昭如とB‐29/空襲被害を意味するB‐29/『火垂るの墓』の受容状況/代表作として押し出された「火垂るの墓」/戦災孤児をめぐって/B‐29でよみがえるものごと/終章 B‐29は美しかったのか/「機能美」という言葉のいかがわしさ/「流線形」はどのように機能するか/拡大・浸食する「流線形」/「流線形」と優生思想/爆弾を落す「美人」像/そして、B‐29は美しかったのか/あとがき/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

さとうしん

18
B29に限らず、日本による中国の空襲を米軍の日本列島空襲と対比するなど、広く空襲を対象としている。B29についても、その開発・誕生から歌謡、模型、特攻の搭乗員、空襲に遭った人の所感、しばしば「美しい」と評された機体のフォルム、「火垂るの墓」に代表される戦後のエンタメなど話題が幅広い。あまり語られない、民間人による墜落したB29の搭乗員の扱いや、日本軍の搭乗員も国内での墜落時に巻き添えのような形で手荒い扱いを受けたというのが興味深い。2023/06/11

Minamihama

16
読みながら Unbroken Laura Hillenbrand を思い出していた。 反対側から見たB-29の事を。2024/02/18

Toska

9
間違いなく興味深いテーマであるはずなのだが、今ひとつこれに徹し切れなかったか。著者自身があとがきで告白している通り、戦災や空襲そのものに関心を削がれ、その分だけB-29への集中度が薄められた。虻蜂取らずの感あり。戦後の日本社会でB-29を科学技術の権化とする見方が広まった背景や「機能美」批判など各論では惹かれるものがあっただけに、ちょっともったいないと感じてしまった。2023/09/27

Tomozuki Kibe

6
 日本人が見たB29を庶民の視点から研究。古川ロッパの証言からアニメージュまで(ヒコーキ好きの内田百閒がB29の見た目を語っていないのは意外)。まずは日本による重慶無差別空爆をあげ、下を見おろす虐殺の構図が7年後かえってくることを指摘。また、空想科学作家海野十三(海野を称賛した橋本哲夫も)も軍の提灯小説に過ぎないとばかりにケチョンケチョン。彼の予言は関東大震災の焼き直しであり、「朝鮮人虐殺」を全く克服していないと指摘する。(続く)  2024/01/22

じぇろポーta

6
飛行機の軍事利用と「戦略爆撃」思想の誕生。第一次大戦以前からすでに飛行機の軍事利用は始まっていたとの指摘。海野十三を空襲の惨禍を予言的に書いたとして好意的に評価することについて、きわめて批判的に考察するところが圧巻。B-29を「美しい」と思った当時の人々の心情。太平洋戦争敗戦後の「反省」の中身。戦後の復興の歩みから取り残された「戦災孤児」。敗戦直後の徳川夢声の日記の内容が当時の一般庶民(男性)の偽らざる感想としてかなりうへえ…となって興味深い。2023/06/22

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/21266238
  • ご注意事項

最近チェックした商品

化身 下巻
  • 電子書籍
化身 下巻