内容説明
「雪崩事故」報道に警鐘!
雪崩事故の多くは《人災》である!
雪に埋まった最愛の息子―その死の真相を求めて母は「県(知事)」を訴える裁判を起こした。「雪崩は自然災害という常識」を覆した5年裁判の核心を明らかにする、山岳&法廷ノンフィクション
2017年3月栃木那須岳、高校生・教員の雪崩事故――
いまなお雪崩事故が相次ぐのは、本書の裁判の結果・成果が生かされていないからである!
科学的な知見、親子の熱い人間ドラマ、「雪崩は自然災害」として幕引きを図る県、型破りな弁護士の執念……、人間の覚悟と情熱と優しさを描き切った臨場感あふれるヒューマンドキュメント。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoneyama
11
30年以上前の雪崩事故裁判について。私の登山人生の初期と時代も人々もとてもかぶっている事件だったのに、この本を読むまでその裁判の詳細を知らなかった。そのことが読後感として大きなショックだ。登場人物のほとんどの人を知っていて、そのとき札幌から長野市にも転勤で住んでいて、報道にも携わっており、山にも登り込んでいたのに。取材は判決後十数年経ってから、出版は更に十数年経ってからという。なぜ今?とも思うが、私にとっては大きな意味があった。2023/04/12
100名山
8
1989年3月18日長野県山岳総合センター主催の冬の野外生活研修会に、4月からの山岳部顧問を請われて参加して雪崩で亡くなられた酒井耕当時24歳の母親の三重さんは十分な調査検討もされず原因はどこにあったのか、全く明確でない報告書に納得できず弁護士と相談の上、国家賠償法第一条に基づき損害賠償を請求する訴状を書き上げます。5年に及ぶ長野地裁松本支部での公判を経て勝訴します。争点は自然災害か人災かであり、裁判官に積雪期の現場の同行を求めることまでしました。今年86歳の著者は読書の感情を揺さぶるのが巧く読ませます。2023/05/28
karimero
2
法曹関係者も必読の裁判記録。冬山の雪崩事故のほとんどは登山者やスキーヤーによる人災。平成元年3月長野県山岳総合センターの研修会中に雪崩が引き起こされた。そして新卒高校教諭の命が失われた。事故が起こった瞬間とその前後,そして救助活動などの状況がリアルに描かれている。法廷闘争についても実際の調書を元に証人尋問の様子が詳細に描写されている。更に登場人物のほとんどが実名。この本があと7年ほど早く出版されて出回っていたら,栃木県那須岳の事故は起こっていなかったかもしれない。それほどに那須の雪崩事故に酷似している。2023/04/06
青いランプ
1
この本を読んでよかった。雪崩が人災の可能性があると初めて知った。いい本だった。2023/09/09
半蔵門タロー
0
34年前、高校の山岳部活動のための研修会で雪崩が起き、新米教師が亡くなった。その母親が県を相手に訴訟を起こし、5年後に勝訴するまでを追ったドキュメント。雪崩は予想できないという当時の常識を、山の素人である母親が、理解ある弁護士や協力者を得ていく過程が丹念に描かれている。発売は今年3月で経緯・理由はあとがきなどに詳しいが、出版にこぎつけたのは、先日判決が下りた那須の高校山岳部での雪崩事故が一要因だろう。両裁判とも原告勝訴だが、犠牲者が戻ってくるわけではない。同じ失敗は繰り返さないためにも本書は意義深い。2023/07/03