内容説明
イランとサウジのにらみ合い、シリアやイエメンでの内戦やテロの拡大、進まないイラクの復興など、どの問題の陰にも正統・多数のスンニ派と異端・少数のシーア派の対立がある――この理解は、物事の半面しか見ていないに等しい。シーア派への警戒感は、なぜ高まったのか。宗派対立への誤解を意味ある議論に変える意欲的な試み。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
67
中東問題についての本。中東の問題は、サウジ等の地域大国や米国等の域外大国の介入、シーア派とスンニ派に留まらずアラウィー派やキリスト教諸派、西欧自由主義やイスラム主義といった幾重にも入り組んだ分裂と対立を反映したものであることが、イラン革命からアラブの春までの流れの中で語られます。それにより国家の枠を外れた部族、宗派による紐帯が再強化され、それぞれの民兵組織が域内外の国を引き込んで紛争が国際化していること、その外部勢力も中東問題永続化の要因となっていることが示されて、その複雑さ解決の難しさが実感されました。2024/02/22
skunk_c
26
宗派対立が原因と捉えられがちな現在の中東情勢について、むしろそれはひとつの結果であり、また手段となっていることを解き明かす。1979年のイラン革命により、非アラブシーア派国家が出現する中、宗派というコミュニティがオスマン帝国のミレット制の中で形作られていたものが、ある意味専制的な国家体制が崩れる中でまだら状の権力として機能し始める。これがサウジやトルコなど地域大国、あるいは欧米・ロシアの錯綜する思惑の中で複雑に絡み合う様子をコンパクトに解明する。とても腑に落ちる内容。シーア派の説明も実に分かりやすい。2018/07/24
TS10
21
中東における宗派間対立は、教義そのものに基づくものというよりは、秩序の崩壊後、政治の手段として利用されてきた面が大きいとする。イラク戦争やアラブの春により既存体制が崩壊した後、宗派のアイデンティティに基づく政治が展開されたが、それは、民主主義の下では恒常的な多数派と少数派との対立を生み出し、結果、ナショナリズムは希薄化し、内戦状態に移行する国も現れた。しかし、宗派の共同体間の対立と言っても、どこまでがアイデンティティに由来し、どこまでが政治経済構造に基づくものか判然としない点が、また難しい所であると思う。2025/07/02
鯖
20
シーア派とスンニ派の争いが中東情勢の根源とわかった気になるのはよくないと啓蒙する2018年の書。シーア派とスンニ派の争いも教義というよりは宗派が作り上げてしまったコミュニティの争いであり、政治、社会、経済という世俗的な面での争いが大きいらしい。…なんか鎌倉新仏教あたりなのかもしれない。アラブの春以降に現れた「まだら状の秩序」で国家に留まらず、様々な価値観に揺さぶられているようにも思う。…しかしこんな中東のど真ん中に異分子の塊みたいな国を作っちゃったイスラエルェ。そりゃ無理だよな。2024/01/25
こぽぞう☆
16
図書館本。最近忙しいながらも中東情勢にちょっと興味が。イラン革命によってシーア派の台頭が始まり、アメリカのゴリ押しの民主化とイラク戦争と対立は深まる。この本はシリーズ第2作に当たるらしいので、第1作の「サイクス・ピコ協定 百年の呪縛」をブックオフオンラインでGET。2019/05/13
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