内容説明
関東軍は、一九一九年に中国・関東州と南満洲鉄道附属地の保護を目的に成立した。しかし、一九二八年の張作霖爆殺事件や三一年の満洲事変など、日本政府・陸軍中央の統制から外れて行動し、多くの謀略に関与した。「独走」の代名詞として悪名高い組織は、どのようにして生まれたのか。軍事・外交史研究の蓄積に、中国側の史料も踏まえ、組織制度、軍人たちの個人的特性、満洲の現地勢力との関係から解き明かす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
81
日本が日露戦争により関東州(遼東半島先端)を占領してからソ連参戦によって文字通り瓦解するまでの軍の動きが記述されている。地方軍の司令官が天皇直隷であり、「統帥権の独立」の建前から言って、中央の指示を受けず独自行動ができると解釈されること、日本は(天皇も含む)司令官が自ら命令を下すのではなく、配下の参謀に作戦等を委ねるのをよしとする風潮があったことが、石原莞爾に代表される独走を招くことになったようだ。ならばこれはある種仕組みの問題でもある。しかしこの内容で年表が付いていないのは残念。読みやすくなるのに。2023/06/03
へくとぱすかる
60
現代史でも有名な独断専行の結果、さきの戦争の発端となって、最後は現地に居留民を見捨て、残留孤児の悲劇まで生んだ。明治の二度の戦争を経ての鉄道権益から始まり、時代の政策と絡んで巨大化していった。読んで驚くのは、軍は命令によって動く組織であるはずなのに、臨機応変が奨励されていた点。これが都合よく拡大解釈され、政府・陸軍中央のコントロールも効かない事態を招いた。著者の見解・解釈は少なめだが、事実関係が詳説されていて、明治以来の間断なき流れとしてつかめる。再びこのような時代を招かないためにも知っておかねばと思う。2023/07/27
みこ
28
私の中で好印象など全くないといっても過言ではない関東軍の成り立ちから崩壊まで。結論から言うと日本人が戦争について考えるときに是非読むべき一冊ではないかと思う。天皇直属であることを自分の都合のいいように解釈し、好き放題したようにしか見えない。歴史を過去や結果から考察することは好ましくないとは分かっていながらも、現代の愛国者の一人としては満州事変もノモンハンも「何してくれたの⁉」という感想。しばしば制止を呼びかけながら無視された国内の大本営の中にも同じことを思った人がいて欲しいと願ってやまない。2023/07/03
まると
27
軍隊は上からの命令が絶対でなければならないのに、なぜ関東軍では謀略に基づく独断専行がまかり通るようになったのかがよくわからなかった。陸軍中央に戻った石原莞爾が関東軍の内モンゴル進出に自重を求めたら、武藤章に「あなたを見習った」と言われて二の句も告げなかったというのは何という皮肉だろう。石原の手法は負の部分だけが引き継がれたが、その興味深い思想を受け継ぐ者はいなかったのだろうか。日本が泥縄式に戦争へと突き進んでいく過程で、満蒙権益を守るべく設立された関東軍が要所要所で重要な起点になっていたことは再認識した。2024/04/29
月をみるもの
21
参謀本部や政府の統制をはねのけ、下克上によって満州事変を成功させた石原。しかし帰国し陸軍中央で国全体の舵取りをするようになった彼は、まさにその成功体験によって関東軍を制御できなくなり、やがて失脚していく。ドイツのロシア侵攻直後に、満洲でも戦いを始めていれば、ひょっとしたら勝機があったかもしれない。しかしそれまでさんざん暴走してきた関東軍は、この時歴代司令官中もっとも慎重かつ有能な梅津美治郎によって抑え込まれていた。この皮肉な状況の中、石原に「東條上等兵」と揶揄された人物が陸軍中央で権力の階段を登っていく。2023/09/30
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