内容説明
雹と雨と雷鳴の狂乱とも形容すべきすさまじい嵐の夜、没落した名家バナーワース家の館の一室で眠るフローラは、ふと得体の知れない何者かが窓を破って部屋に侵入しようとしていることに気づく。恐怖で凍り付き、四肢を硬直させ、「助けて」とつぶやくことしかできないフローラが目にしたのは、血の気のない蒼白な顔、磨かれたぶりきのような目、深く裂けた唇、そしてぞっとするような瞳にも増して、なにより目を引く、白くぎらぎらした鋭い牙のような、猛獣のそれを思わせる突き出た醜悪な歯を持つおぞましい生き物であった。部屋に侵入した怪物は、不気味な咆哮をあげながらフローラに近づき、その長い髪を手にからめとって体をベッドに押しつけると、鋭い金切り声を上げるフローラの喉笛に牙のような歯を突き立てた。ほとばしる血潮が滾々とあふれ、室内にはそれを吸う異様な音が響いた……
ヴィクトリア朝時代のイギリスで、週刊の安価な媒体に連載された《ペニー・ドレッドフル》の代表的な作品であり、以後のあらゆる吸血鬼作品や吸血鬼造型の原点ともなったゴシック・ホラー小説の伝説的作品、世紀を超えて、ついに刊行開始!
装訂・シリーズロゴデザイン=坂野公一(welle design)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
蝸牛
4
#読了 #読書好きな人と繋がりたい 本の厚さと二段組なことに若干びっくり。意外とさらっと読めました。すごい中途半端なところで終わったけども、え、これこのまま2巻に続くってこと?2023/04/05
binbon
0
本の分厚さと表紙の絵に惹かれて読み始め。 嵐の夜に眠る乙女に近づく恐ろしい吸血鬼と、彼女を救おうとする兄、食客、恋人とその叔父達…。 が、だんだん皆好き勝手放題に乙女を救わんと奮闘し始め、唯一の常識人(とも思える?)フローラの兄・当主のヘンリーが振り回される状況に。 吸血鬼がただただ気持ちが悪くこずるいのも、敵役としてちょっと味気なく、フローラと館を狙う理由を早く知り、納得したいなとも思います。2023/10/14