内容説明
言葉と自在に戯れる、小説の可能性
「アメリカ文学の静かな巨人」のデビュー短編集。言葉と自在に戯れるデイヴィスの作風はすでに顕在。小説、伝記、詩、寓話、回想録、エッセイ……長さもスタイルも雰囲気も多様、つねに意識的で批評的な全34編。
ある女との短命に終わった情事を、男が費用対効果という観点から総括しようとする表題作「分解する」。救いのない不動産に全財産をつぎ込んだ男が、理想の家屋の設計の幻想を若い猟師と共有していくさまを描いて不思議に美しい「設計図」。語学講座のテキストの裏で不穏な自体が進行していく「フランス語講座その1――Le Meutre」。人生で何ひとつ成しえない男のオブローモフ的生活を描く「ワシーリィの生涯のためのスケッチ」。〈夫〉の喉にひっかかった小骨をめぐるどこかほのぼのとした「骨」や、長編『話の終わり』の原型とおぼしきファン必読の短編も。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
maimai
10
面白い。「小説」という言葉で括ってしまうのがためらわれるようなさまざまなスタイルの短編が、200ページ余りの中に34編。最も短い「完全に包囲された家」はたった4行で終わる。縦横無尽に文体を駆使するというよりは、文章と戯れるという感じ。書くことが好きなのだ、この人は。読んでみようかなという方には、最初に試す短編として「夫を訪ねる」をお薦めします。あとは「姉と妹」。2023/04/16
ヘジン
9
いかにも岸本佐知子さんが好んで訳しそうな、珍妙な味わいと毒を含んだ、ちょっと寂寥感もある話の数々。『話』嘘くさい彼の言葉を因数分解する。しちめんどうくさいタイプの人だけれど、私は好きだ。『義理の兄』シュールすぎる。私に義理の兄はいないはずだが、実は存在感がないから、いても気づいていないだけなのか? それともこれは何かの比喩なのか? 『母親たち』いいよね、これはいい話。2023/06/01
ざじ
4
表面張力ぎりぎりの情緒が静謐な文体でぷつんと描かれている短編を読むと、自室にこの本があって良かった〜と思う2023/04/23
縁川央
3
様々なスタイルで描かれる様々な話。不思議な話の中に、ふと日常を感じる動作や感情があって物語はそこらじゅうにあるのだと思った。2023/04/26
ふゆきち
2
何となく硬質的で長短さまざまな短編集。中には1ページの掌編も。短い方がより奇妙な話になる気がしました。特に印象的だったのは『街の仕事』。2023/02/08