内容説明
性的少数者のためのパートナーシップ宣誓制度について受けたインタビューが、萌えるとSNSで注目を集める春日佑馬と長谷川樹の同性カップル。そんなふたりに、同棲生活を延べ100日撮影するドキュメンタリー取材の依頼が舞い込み、同性愛者への理解を広めたい佑馬はそれを受諾する。しかし佑馬と樹は実質的に破局していた。佑馬は樹を説得し、ふたりはカメラの前では仲の良い恋人を演じることに。そんなことを知る由もない制作会社のディレクター茅野志穂は、ありのままの彼らを記録しようと意気込むが……。愛を撮る者、愛を偽る者、愛を捨てきれない者。様々な想いが交錯する100日間の幕が上がる。
『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』の浅原ナオトが贈る、“多様な性”への“多様でない視線”に対峙する人々の、蹉跌と再生の100日間の記録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
美紀ちゃん
66
浅原ナオトさんの本が好きなので読んだ。この本も知らないこと気づかなかったことや学べることがたくさんある。マイクロアグレッション→日常で悪意なく放たれがちな小さな偏見のこと。結末はタイトルに書いてあってわかっていたけれど。ラストはハッピーエンドになって欲しいという願いを込めて読んでいたが、、。樹は野良猫のような人。何の前触れもなく目の前から消えてしまう。突然そらから降り注ぎ人をずぶ濡れにして自分勝手に去っていくスコールのような人。次の人へと去っていく人。寂しい終わり方で胸がギュッっとなった。映像化して欲しい2023/06/25
ぴよぴよ
28
パートナーシップ宣誓を提出した役所でインタビューを受けたことをきっかけに、100日間の取材を受けることになるゲイカップルの佑馬と樹。佑馬の思惑、樹の思い、取材側の志穂の思惑と共に物語は進む。 多様性という言葉を聞かない日はないと感じる今日。ただ多様性という言葉がひとり歩きしてはいないか。年齢、性別、性的嗜好を超えて一人間として世間に認められたい。そのシンプルな願いがこの物語の根底にある。 取材を受けることによって起こる摩擦をどう帰着させるのか。決して突飛ではなく、誰にでもありうる話なんだろうと思った。2023/07/24
シタンディ
18
再読。読了する直前に作者浅原ナオトさんの訃報に触れた。7/16死去。38歳。死因は悪性リンパ腫。5/19刊行の本作が絶筆になってしまった。7/17の朝再びこの本を手に取ったのは、きっと偶然じゃないんだな。代表作『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』に出会ったのは2年前。すっかりハマって魅了され大ファンに。作中で長谷川樹を「通り雨みたいなやつ」と表現した。誰かの心をざっと濡らし、乾いた頃にはもういない…と。俺にとって浅原ナオトがそうだ。ただ君が去るのがあまりに早すぎて、俺の心はまだずぶ濡れのままだ。2023/07/26
さわ
18
久々にガツンときた。性的マイノリティのためのパートナーシップ制度を受けた佑馬と樹。そんな2人にドキュメンタリー撮影の依頼がくる。LGBTについて理解を広めたい佑馬は承諾するが、すでに破局寸前の2人は100日間だけ恋人のふりをするのだった。普通の人になりたい祐馬と、ほっといてもらいたい樹。100日目、宣誓書を手にしての2人の会話が。会話が。。。2023/05/24
シタンディ
17
浅原ナオトさんの作品は、面白いだけじゃなく気づきと学びをたくさんくれる。マジョリティである異性愛者達の作ろうとする多様性社会と、セクシャルマイノリティ当事者の求めるものの差異。「こうしてあげた方がいい」の声がデカくて多すぎるが故に、当事者たちの「こうして欲しい」の声が押し潰される世界。特別扱いして欲しいわけじゃないんだ。天然記念物や絶滅危惧種のように手厚く保護してくれなんて望んでない。ただ、普通の人間として、当たり前のことを当たり前にする権利を保証しろ。といってるだけなんだよね。2023/06/05