内容説明
“あの日”何があったの? 死んだあの子と“私”に……
校舎裏で殺された女子生徒、容疑者は“親友”とされる一人の少女。
食い違う18の証言、やがて浮かび上がる戦慄の真実。
主人公は高校一年生の女の子、ジュヨン。ある日校舎の裏で親友のソウン
が死体となって発見され、警察から容疑者として取り調べを受けることに
なる。昨日の放課後、ソウンと大げんかをしたのは確かだが、記憶は途中
からすっぽりと抜け落ち、殺人の記憶はない。
裕福な家庭で何不自由なく育ち、誰からも羨まれるジュヨン。一方、貧し
い家庭で育ち、学校ではあまり目立たなかったソウン。性格も周囲の評価
も正反対だが、他の誰も間に入り込めないような親友だった。物語は、勾
留されたジュヨンの心の声と、周囲の人たちの証言を交互に綴っていく。
当初バラバラに見えた「真実」をめぐる証言は、ある方向に集約していく
のだが……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
がらくたどん
68
校舎裏でソウンが煉瓦で頭を打たれて死んでいた。煉瓦の指紋からいつもソウンと共にいたジュヨンに殺人の容疑が。そういえばジュヨンはソウンを助けていた。いじめていた。親友だった。支配者と奴隷だった。二人の実際の行動が関係者の「信じたい」物語に沿ってジュヨンを追い詰める方向に裁断されていく。ジュヨン自身も自分の信じるソウンとの物語を手放せない中で「殺したいとは思ったが殺していない」という実感を護り切れない。かわいそうなジュヨン。自身を含めた皆の物語の中で「信用できない憎まれ役」しか割り当ててもらえないなんて。傑作2023/06/27
sayuri
61
衝撃を受けた。思い込みが真実へと姿を変えていく恐ろしさに震えた。ジュヨンの親友・ソウンが死体となって発見された事に端を発した事件は思いも寄らない方向へ向かう。凶器と思われた煉瓦からはジュヨンの指紋が見つかり、誰もが彼女を犯人だと決めつける。クラスメイトや担任、弁護士や両親までもが。追い詰められていくジュヨンが発した「どうせ信じてくれないくせに」の言葉に涙が込み上げる。物語は『真実』と『信じるということ』の二つのテーマを掲げ、私達がどうあるべきかを考えさせてくれる。終盤で明かされる二つの真実には言葉を失う。2023/06/08
konoha
53
高校生のソウンが殺され、親友のジュヨンが疑われる。シンプルな設定ながら様々な語り手による証言で構成し、「何が真実なのか」と読者に揺さぶりをかける。善と悪、裕福と貧困、いじめる側といじめられる側。人はわかりやすい対立構造に当てはめてしまう。情報への接し方を考えさせられる読書だった。短い章の転換が鮮やか。スピードに乗って読めるのが楽しい。先生、弁護士、同級生、家族が語る中、ジュヨンとソウンの存在感が増していく。翻訳も韓国の空気を上手く表現している。日本のミステリーにはない非情なクールさが軽やかで好き。2023/07/18
kei302
48
読友さんのレビューで興味を持った本。“みんなが”“誰かが”で広まる噂の恐ろしさ、一方の言い分だけを取り上げる報道の弊害。事件や事象は異なるが、現実社会でも似たことは起きている。極限状態に陥ったとき、疑問を感じ本質を探ろうと行動してくれる人が現れたことが救いだったのだが、真相は明らかにされず…。ソウンが、屈折した気持ちをジュヨンにぶつける場面にジュヨン同様に衝撃を受けたり、高校生ってそうだよなあと精神的幼さに納得したり。2024/01/16
pen
43
学校の敷地内で女子生徒が殺害された。容疑者は親友の女子生徒。その瞬間の記憶が曖昧な容疑者。でも関係者の彼女に対する容赦なき印象の裁き。イメージや思い込み、偏った情報の扇動により、人はいとも簡単に物事を判断する。この少ないページ数で植えつけられた恐怖は無数にある。2023/07/09