内容説明
現代の暮らしはあらゆる産業技術に支えられている。子どもの「理科離れ」が進み、大人も日常生活で使うモノの背景に目を向けることが少ないなか、暮らしを支える技術や産業を身近に感じる機会を提供しているのが企業博物館である。
なぜ私企業が博物館を作るのか。企業は博物館で何を後世につないでいきたいのか。国公立博物館との違いとは――。
民間企業が自社の歴史や製品を展示・紹介する企業博物館は、実は公立博物館では収集するのが難しい貴重な産業遺産の宝庫だ。船舶や橋梁を造る重工業企業の製品や印刷機、機械の内部に使用されている歯車など、一般ユーザーが目にする機会は少ないものの日本の産業の発展を担ってきた技術資料に直にふれることができる場であり、技術を継承するためのアーカイブにもなっている。
子どもや学生向けの「社会と科学について考えるワークショップ」開発に携わる著者が、そうした企業博物館の社会的な機能や意義に注目して、運営企業83社を対象にしたアンケートと、企業博物館14館を実際に訪れて実施したインタビューを通じて、企業博物館の実態と可能性を提言する。
[取り上げるおもな企業博物館] *( )内は運営企業
東芝未来科学館(東芝)、ニコンミュージアム(ニコン)、シチズンミュージアム(シチズン時計)、ヤンマーミュージアム(ヤンマーホールディングス)、三菱みなとみらい技術館(三菱重工業)、三菱重工業長崎造船所史料館(三菱重工業)、カワサキワールド(川崎重工業)、imuse(IHI)、長岡歯車資料館(長岡歯車製作所)、ミツトヨ測定博物館(ミツトヨ)、アルプスアルパイン未来工房(アルプスアルパイン)、TDK歴史みらい館(TDK)、容器文化ミュージアム(東洋製罐グループホールディングス)、印刷博物館(凸版印刷)
目次
はじめに
第1章 企業博物館はどのような存在と考えられてきたか
11 なぜ企業博物館について考えるのか
12 企業博物館はどのように定義されてきたのか
13 企業博物館への疑問
14 企業博物館はいつごろ登場したのか
第2章 企業博物館の研究者たちの視線
21 「博物館」であることが期待された1980年代
22 CSR活動としての企業博物館
23 企業博物館で「宣伝」はしないのか
24 BtoB企業にとっては一般社会との接点
25 企業のアーカイブズとしての機能
26 自社の社員と事業に貢献する存在
27 企業博物館は新たな商品やサービスを生み出せるのか
28 企業博物館は「神殿」なのか
第3章 企業はなぜ企業博物館を作るのか
31 取材で見えてきた企業博物館の姿
32 一般向けの商品も扱う有名企業は何を見せてくれるのか
321 東芝未来科学館
322 ニコンミュージアム
323 シチズンミュージアム
324 ヤンマーミュージアム
33 重工業の企業博物館に特徴はあるのか
331 三菱みなとみらい技術館
332 三菱重工業長崎造船所史料館
333 カワサキワールド
334 imuse(IHI History Museum)
34 一般消費者との関わりが少ない、機械部品や測定機器メーカーの企業博物館
341 長岡歯車資料館
342 ミツトヨ測定博物館
343 アルプスアルパイン未来工房
344 TDK歴史みらい館
35 消費者が直接買うことはないが、日常的に製品に接することがある企業
351 容器文化ミュージアム
352 印刷博物館
第4章 企業博物館とは何をするところなのか
41 企業博物館の詳細な機能がみえてきた
42 企業博物館は文化施設を目指しているのか
43 企業博物館は社会貢献活動なのだろうか?
44 企業博物館におけるPRとは何か
45 アーカイブズとしての企業博物館
46 社員の知識・スキル・意欲向上への活用
47 アイデア創出や技術開発のシーズになりうるか
48 企業博物館を使って社員が交流する意味
49 役割は変化する――企業博物館の汎用性
410 「未来」を扱う企業博物館
411 博物館であることの否定
第5章 企業博物館の全体像をつかむことはできるのか
51 企業博物館の悉皆調査は可能か
52 博物館として調査研究をおこなっているか
53 展示内容は「自社の歴史」がトップ
54 企業博物館は誰を対象としているのか――「顧客」がトップ
55 企業博物館にはどんな機能が期待されているのか
56 展示内容と期待される機能に有意な関係はあるのか
第6章 非公開の施設は企業博物館と呼べるのか
61 非公開施設の目的は何か
62 アンケートからみえた非公開施設
第7章 博覧会・見本市・展示会と企業博物館
71 見本市・PR施設・企業博物館
72 ディスプレイ業からみる博覧会と企業博物館
73 万博から企業博物館へという道筋はあったのか
74 1980年代の時代背景と企業博物館
75 企業博物館への視線を変えるとみえてくるもの
第8章 企業博物館とは何か
81 複数の機能と「博物館」との関係
82 アンビバレントな要素は共存する
83 企業博物館が博物館のモデルになる
84 企業博物館のこれからを考える
あとがき
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