棕櫚を燃やす

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棕櫚を燃やす

  • 著者名:野々井透【著者】
  • 価格 ¥1,430(本体¥1,300)
  • 筑摩書房(2023/05発売)
  • ポイント 13pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480805119

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内容説明

父のからだに、なにかが棲んでいる――。姉妹と父に残された時間は一年。その日々は静かで温かく、そして危うい。第38回太宰治賞受賞作と書き下ろし作品を収録。

目次

棕櫚を燃やす/らくだの掌

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

夢追人009

280
第38回太宰治賞(2022年)受賞作で著者の野々井透(とう)さんは女性です。幼い頃にある事情により母を亡くし父と3人で暮らす春野(39歳)と五つ下の澄香の姉妹に突然、父が余命一年だと告げられ二人は相談して限られた時間を全うしようと話し合う。姉妹は男性との間に子孫を残す事を望まない主義であったので縁談は流れるが父はそれについて少しも責めたりしない。純文学という感じで文章が美しいです。ヒロインの姉・春野は時に胸がむるむるするという独特な表現の感情に駆られますが大きな激情には流されず淡々と日々は過ぎていきます。2023/05/07

buchipanda3

119
棕櫚の写真を見ると長い葉が広がる姿に馴染みがあった。表題作は棕櫚が庭に繁る家に住む家族を描く。父親の余命があと一年と告げられ動揺する語り手(娘)。彼女の自分の中でうまくまとまらない気持ちを丁寧に描写しようとしているのが印象的だった。人との距離感に戸惑う生き方をしてきた彼女は、父を失うことに悲しさだけでなく、相手の内面に踏み込む怖さや逃避できない辛さがないまぜとなり自分を縛り付ける。それでもほの温かい家族の時間の繋がりは気付かせる。その光景はもう来なくても共有した理屈でない瞬間を思い願うことはできることを。2023/05/14

ちゃちゃ

108
「あまさず暮らす」とは、どういうことなのか。余命一年を告げられ衰弱してゆく父と二人の娘の日常を通し、静かに語られる作品だ。父の病について作中では具体的な記述が一切ない。際立つのは「私」の独特な心理描写。「むるむる」と「私」の源のような場所が震え出し逃げたくなるような奇妙な感覚。心の深奥にある魂が辛い現実に共振して身体感覚となり、言葉にし難い感情として表出されたものか。比喩を巧みに用いた散文詩を思わせる静謐な文章。終末期の父の「まるごと全部」と真摯に向き合う、「私」の深い哀しみと祈りを繊細に描いた秀作だ。2023/10/30

りゅう☆

78
「父のからだに何か棲んでいる」の帯にホラー?と思いきや家族の愛、喪失、温かさに触れた静謐な物語。姉妹と3人暮らしの父の命の灯が消えようとしている。姉が壊すことができたのは父という戻る場所があったから。姉妹が作った料理を食べ、その日あったことを話す。いつもの日常が終わる日が近づいてくる感が切ない『棕櫚を燃やす』。年配者からの相談をどうしたらいいか考え、あらゆる準備を手伝う仕事を並木さんと一緒にこなす。だがある日並木さんは永遠に戻ってこない放浪に出てしまった。並木さんとの日々の回顧がもの悲しい『らくだの掌』。2024/02/27

はっせー

74
優しくて切ない小説を読みたい人におすすめの本になっている。一言で言うなら粉雪のような作品であった!タイトルの『棕櫚を燃やす』について少し考えてみた。棕櫚とは植物の名前であろう。ギリシャ語における棕櫚などのなつめやしは不死鳥という意味があるらしい。その意味から考察すれば棕櫚を燃やすとは不死鳥のような永遠の時間などなくいつかは何かによって燃やされてしまうことを指すと考えた。そこからこのストーリーを読んでいくとおそらく燃やす火元が見えてくると思う。永遠などがないためいまの世の中を大切にしたいと思える本であった!2023/05/14

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