内容説明
恋人の百合子が失踪した。彼女の住むアパートを訪れた私は、隣人を名乗る男と遭遇する。そこで語られる、奇妙な話の数々。果たして、男が目撃した秘技・耳もぐりとは、一体 (「耳もぐり」)。ほか、『残月記』で第43回吉川英治文学新人賞受賞&第43回日本SF大賞受賞を果たした著者による、恐怖と驚愕の到達点を見よ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
426
小田雅久仁さんの7つの禍を描いた恐怖と戦慄の最新作品集。私は初読み作家さんでしたが、フランスのマルセル・エイメ氏や我が国の筒井康隆氏の作風の影響を感じましたね。冒頭の「食書」は本を食べるをテーマにして詳しくは書きませんが、とにかくあり得ないSF的にねじ曲がった展開が際限なく延々と続いて行きます。おとなしいのは最初だけで興が乗ってスイッチが入ると止まることなくどんどん突っ走って行きます。著者の文体には、あっさり淡白という表現は絶対にあり得ません。長ーく粘っこい文章の連続に深淵の彼方まで引き摺り込まれますよ。2023/07/07
starbro
334
小田 雅久仁、2作目です。話題作は、不条理フェティシュ幻想譚の短篇集でした。オススメは、「食書」&「柔らかなところへ帰る」&「裸婦と裸夫」です。食書メーターが登場しました(笑) https://www.shinchosha.co.jp/special/wazawai/ 【読メエロ部】2023/09/05
hiace9000
221
いったい誰が想像し、紡ぎ得るのだろう。この独創的世界観の創生と、唯一無二の小田雅久仁流日本語比喩表現を。圧倒的想像力の奔流に身を委ね漂う、悍ましくも艶かしいまでの肉体そのものへの耽美で綴る七短編。日常に潜む些細な違和感が突如変異し、超常の破局めがけて昇華しゆくなれの果てを往く怪奇譚は、忽ち読み手の快楽的恐怖心と融合していく。禍々しいまでの「禍」の渦に飲み込まれ翻弄され、果てしない虚構の海に溺れる恍惚と小説の文字に侵蝕される愉悦の危うさ、そのありかを己心に認め、ただただ打ち震え痺れる。驚愕の一作である。2024/05/28
まこみや
213
ヴィトゲンシュタインの所謂「論理空間」という概念がある。いわば、論理的に矛盾しない限り、起こりうる可能性の総体である。現実の世界は論理空間のごく一部に過ぎず、現実を取り巻いて、現実化しなかった可能性が広大に開けている。『禍』の短篇は現実の世界から可能性の世界への越境だろう。主人公は、しがない裏ぶれた「表」の世界から目眩く「裏側(異界、夢、物語)」の世界へと、爆走する奔流のまま流されていく。論理空間を開くのは、ひとえに分節化された言語の力である。小田雅久仁の最も畏怖すべきは論理空間を開く言語力なのである。2023/08/22
yumimiy
172
「残月記」がハマらず再挑戦。本書の方が圧倒的に不気味。怪談かホラーか怪奇かは読み手次第。先ず装丁をじっくり観察、キモイ😱①「食書」本を喰らわば穴ふたつ。②「耳もぐり」手指は鍵、耳は鍵穴。③「喪色記」視線への苦手意識を抱えた男が観た世界の終末。④「柔らかなところへ帰る」全人類は子宮から産まれる。男なんざいくらでも生んでやる!正に男がビビる話。⑤「農場」神は土アマダの塵で人アダムをを形作りその鼻に命を吹き込んだ⑥「髪禍」入信すれば禿が治る⑦「裸婦と裸夫」全ての人間が裸一貫に立ち戻る。さあ、セカイの底を覗け!2024/12/21
-
- 電子書籍
- 狐族の花嫁~香りが導く運命の番~【タテ…
-
- 電子書籍
- 契約恋人は、前世で私を裏切った男です【…
-
- 電子書籍
- 恋に落ちたシンデレラ【分冊】 10巻 …
-
- 電子書籍
- さよならジェーン【MIRA文庫版】 ハ…
-
- 電子書籍
- 愛しのジュエラー ジャポニズムに夢中 …