内容説明
事務次官、それは同期入省の中から三十数年をかけて選び抜かれたエリート中のエリート、誰もが一目置く「社長」の椅子だ。ところが近年、セクハラ等の不祥事で短命化が進み、その権威に影が差している。官邸主導人事のため省庁の幹部が政治家に「忖度」しているとの批判も絶えない。官界の異変は“頂点”だけに止まらない。“裾野”も「ブラック」な労働環境や志望者減、若手の退職者増など厳しさを増す。いま日本型組織の象徴と言うべき霞が関は、大きな曲がり角を迎えているのだ。事務次官はどうあるべきか? 経験者や学識者に証言を求め、歴史や法をひもとき、民間企業や海外事例と比較するなど徹底検証する。長年、大蔵省・財務省をはじめ霞が関を取材し尽くした生涯一記者ならではの、極上ネタが満載。
プロローグ――霞が関の「聖域」
1章 その椅子のあまりに軽き――相次ぐ次官辞任劇の深層
2章 「名誉職」に過ぎないのか――事務方トップの役割を探る
3章 社長と次官――「組織の長」を比較する
4章 冬の時代――先細る天下り先、激減する志望者
5章 内閣人事局の功罪――幹部人事はどうあるべきか
6章 民間と女性の力――改革なるか人事院
エピローグ――「失敗の本質」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
きみたけ
65
著者は読売新聞経済部で大蔵省や日本銀行を担当、経済ジャーナリストの岸宣仁氏。ブラックな労働環境、志望者減、若手の退職者増など官界に異変が広がるなか、事務次官はどうあるべきかを徹底検証した一冊。霞が関を取材し尽くした生涯一記者ならではのネタ満載。事務次官は「名誉職」との意識・取り扱いを打破し、長期的に改革できる(それを人事評価できる)ように、とりあえず3年任期くらいで固定すべきだと思いました。どんな不祥事でも事務次官の降格はありえなく、辞任するしかないとのこと、横綱があとは引退しか選択肢がないのと同じかな。2025/07/09
Sam
51
前著「財務省のワル」に続く官僚本。もはや不祥事の話には興味もそそられず、参考になったのは制度改革についてのパート。政治任用と資格任用、開放型と閉鎖型の2軸によるマトリックスで各国の特徴を整理し、資格任用・閉鎖型の日本の官僚採用をいかに改革していくべきか、という論議には興味をそそられた。にしても、メンバーシップ型からジョブ型への移行、あるいは「同質社会における情緒的結合」ともいうべき日本社会の特質等、いずれの課題も官僚制に限らず日本社会そのものが抱えるいろいろな課題とパラレルであることがよく分かった。2023/06/08
クリママ
49
かつて、初めて事務次官という名称を聞いた時、次官なのにトップ?と何だか変に思った。省庁の事務方トップで、大臣を助け、省務を整理し監督するとあるが、平たく言えば、調整役。主に、大蔵省、現在の財務省の次官について書かれているが、結局、なんか変ということはわかっても、具体的に何をしているのかわからない。同期のトップが事務次官になり、1年と少しで辞めていく(事務次官になれない人は早めに退職し天下っていく)。大蔵官僚の忙しさを思えばそんなものかとも思うが、下々の感覚とはちょっと違う。他の本で読んだが、⇒2025/09/30
kei-zu
18
省庁の事務方トップである「事務次官」を取り上げる。他国の制度と比較しての人事改善の提案もあるが、著者が官庁と関わったのはマスコミ関係者としてなので、隔靴掻痒の感はぬぐえない。2024/01/21
koji
18
著者は73才。現役でなくても、ここ迄の書物を書けるのですね。「編集力、構成力は衰えない」ことに、勇気を貰いました。さて本書の感想です。私は事務次官を「単なるセレモニー屋」と揶揄する意見には、大いに反対です。官僚の最高峰であり、地位についた人の「見える地平」から滲み出る識見は尊敬すべきです。勿論数多の官僚不祥事(特に破廉恥系)は糾弾されるべきですが、本質は「国民の負託に応える政策実現」に政治家とどうタッグを組むのが最適か、そのための人事は何が最適かという事です。他国比較等本書の提言は大いに考えさせられました2023/12/26
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