明治のナイチンゲール 大関和物語

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明治のナイチンゲール 大関和物語

  • 著者名:田中ひかる【著】
  • 価格 ¥2,310(本体¥2,100)
  • 中央公論新社(2023/05発売)
  • ポイント 21pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784120056536

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内容説明

今や看護師は、社会に欠かせない職業である。専門知識や技能を身につけ、国家試験に受かってはじめて就くことのできる専門職であり、人の健康や命を守る尊い職業として広く認知されている。しかしかつては「カネのために汚い仕事も厭わず、命まで差し出す賤業」と見なされていた。
 家老の娘に生まれながら、この「賤業」につき、生涯をかけて「看護婦」の制度化と技能の向上に努めたのが、大関和である。和は離婚して二人の子を育てる母親でもあった。
 これは近代日本において、看護婦という職業の礎を築いたシングルマザーの物語である。

【目次より】
●第一章 故郷黒羽
家老の娘/「嫁田」の友/田打桜/物言う嫁
●第二章 鹿鳴館
パン・ペルデュ/牧師植村正久/「看病婦」と「看護婦」/婦人慈善市/大山捨松からの誘い/リディア・バラの決意/メアリー・トゥルー/横浜の貧民窟
●第三章 桜井看護学校
「東の慈恵」「西の同志社」/校長矢島楫子/断髪の新入生/『看護覚え書』/病院実習/「器械出し」の名人/花魁心中騒動/「泣キチン蛙」/トレインド・ナースの誕生
●第四章 医科大学附属第一医院
「白衣の天使」/松浦里子と本多銓子/「我朝のナイチンゲールとならん」/医師との軋轢/「求めよ、さらば与えられん」
●第五章 越後高田「知命堂病院」
高田女学校/「廃娼演説会」/瀬尾原始との再会/鈴木雅、天然痘と戦う/日本初の派出看護婦会/婦人矯風会の授産施設/赤痢の村へ/「避病院」の改良/日清戦争と看護婦/「衛生園」にかけた夢/岡見京との邂逅
●第六章 東京看護婦会
派出看護婦会の乱立/後藤新平との約束/木下尚江からの求婚/相馬愛蔵の誠意/遊郭から逃げた少女/『派出看護婦心得』/鈴木雅の引退/「貴官の剣を貸し給え」/『婦人従軍歌』/慰問袋運動
●第七章 大関看護婦会
「生まれては苦界、死しては浄閑寺」/大関看護婦会/内務省「看護婦規則」/大山捨松、スペイン風邪に倒れる/鈴木雅との別れ/関東大震災

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

106
前作の「明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語」と同じくらい胸が熱くなる一冊だった。賤業とされた看護婦の地位を高め、トレインド・ナースの先駆けとなった大関和の物語。近年、ナイチンゲールが、柔和な天使ではなく、自分にも周囲にも厳しい完璧主義者だったとする評価に変わっているが、和は、正に「明治のナイチンゲール」である。不幸な結婚・離縁を経て植村正久に出会い、周囲との軋轢を怖れずに、キリスト教の愛と献身の精神に支えられた看護婦のあり方を貫いた和の人生を、心から尊敬する。後藤新平、相馬愛蔵など、多彩な登場人物も魅力。2023/12/05

えちぜんや よーた

68
2026年前期朝ドラ「風、薫る」の原案となった本。主人公・大関和はあと50年早く生まれていれば、黒羽藩の国家老の娘として育てられて江戸時代での勝ち組だったはずなのに。実は「風、薫る」の前作となる「ばけばけ」のモデルとなる小泉セツも松江藩で四百石取り上級武士の家の出身。NHKの朝ドラは2期連続で「時代ガチャの負け組」をヒロインにするらしい。NHKは朝ドラを平成・令和の「現代もの」をするよりも、幕末・明治・大正の「時代劇もの」の方がウケると踏んでるのかもしれません。2025/02/26

かさお

26
次の次の次の朝ドラの主人公のモデルらしい大関和の物語。明治時代、女性には人権が無く、看護婦も賎業とされていた。和と雅、同じ目的を持つ女性2人を軸にした実話。女性が1人でも生きていけるよう「職業」として「看護婦」を残した功績を持つ。だが正直私は主人公の和より雅の方にシンクロした。それは「滅私奉公」「自己犠牲」だけでは看護婦はいつまで経っても立場の低い薄給で使い捨てになるだけだと、組織を作り、一歩下がった立場で闘っていたからだ。和のような「正義」は自己陶酔と紙一重だとも感じ、後半は雅の事ばかり考えていた。2025/03/12

まる子

22
家老の娘だった大関和(ちか)。約20才も離れた夫と離縁し、子どもたちを養うために働いた。嫁田で約束したあの娘たちは…。様々な人との出会いから看護婦に。明治の頃、看病婦は「汚い」賤業だった。女性が自立できるようにと看護婦の道を切り拓いていく。その道は平坦ではない。自分の子供と離れて暮らし、廃娼に奔り、クリスチャンとして生き、現在の看護師に繋がる。和をはじめ、初代トレンド・ナースたちがナイチンゲールへの志しを育てたからこそ、現在の医療に必要な看護師たちがいる。初代(?)女性医師の荻野吟子も。2023/07/02

uniemo

19
最初に本格的に看護学を学んだ看護師の一人である大関和さんは本書で初めて知りました。クリスチャンとしての考えにも基づき「看護婦」という仕事を女性が賃金を得られるための専門職という位置づけと自己犠牲の奉仕という部分との融和に悩んだ姿が印象的でした。ただ一番衝撃的なのは、和の姑がかわいがっているかにみえた、舅が妾に産ませた娘が遊郭に売られてしまうのに平然としていた場面でした。そのことで和は廃娼運動に興味をよせ一生吉原の遊女に心をよせることになるのですが、100年以上前とはいえ女性の地位の低さが悲しい話でした。2023/08/25

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