内容説明
猟奇殺人×子ども食堂立てこもり
究極のサスペンスミステリ。
地方の温泉街の河原で、子どもの惨殺遺体が発見された。
警察は、小児わいせつ事件を繰り返していた15歳の少年・当真への疑いを強める。
逃亡中の当真は警官の拳銃を強奪し、子分とともに子ども食堂に立てこもった。
自分は無実で、人質を殺されたくなければ、警察は真犯人を捕まえろという。
子ども食堂の店主・司は、人質の少年少女を守るために戦うことを誓うが――
当真は本当に無実なのか。他に殺人犯はいるのか。
さらに新たな遺体が発見され、暴走する当真は引き金に指をかける――
誰もが予想できない結末が待つサスペンスミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
198
ここまで現実は酷くないよね?って心の中で誰かに聞いていた。もっと厳しい面もあるかもよ。って誰かの声が聞こえた気もした。孕んだ時から女は母になるけれど、産んだだけで母と呼ばれる女もいる。女だけの所為なのか・・全てのピースがハマっても気持ちは晴れない。生まれた瞬間から残虐な子はいない‥しわ寄せはいつも弱き者に向かう。いつもよりグロさは控え目ながら、ズシリと楔を打ち込まれた感じの櫛木さんの最新作だった。子供が犠牲になる事件は辛い。私に出来ることは何?2023/06/01
モルク
162
地方の温泉街泥首地区。ここでは日中学校に行かずうろつく子が多い。そして突然いなくなる子も…河川敷で男児の惨殺遺体が見つかり15才の問題児当真が疑われるが、彼は警官から拳銃を奪い手下慶太郎と共に子供食堂に4人の子供と店主を楯に立て籠る。店主司と刑事幾也は泥首の幼馴染み。携帯で繋がりながらも少年と言えど姑息な当真との駆引きはうまくいかない。ネグレクト、住民票がなく学校に行けない…様々な問題を抱えた子供たち。こんな方法でしか声をあげられないのか。殺されでもしない限り社会は取り上げないとの言葉に衝撃を受ける2024/04/23
reo
147
つい最近読んだ薬丸岳氏の「罪の境界」もネグレストや幼児DVに纏わる話だった。そのようなものを特に選んで読んでいる訳ではないが、そういう本に偶々行き当たる。これも時代かも。櫛木理宇氏初読み、立てこもりサスペンスミステリーとして序盤から最後まで息をつかせない巧みな展開が最高。文章の切れ情況描写ともにGOOD(^^)/お薦めです😄2023/08/24
ちょろこ
147
重い、痛い一冊。ずっと石が詰まったリュックを背負っている気分だった。子供を狙った猟奇殺人事件を機に起きた少年達による食堂立てこもり事件。そこで炙り出された地域社会はまるであきらめという社会だ。生きる、学ぶ権利を当たり前に得られない子供たちの叫びが痛い。本を一冊読めるようになりたいという、容易が容易でないやるせなさがたまらなく心に痛い。役立たず、非力、後悔、自分達を卑下する司たちの姿も印象的。小さき声に耳を傾ける、当たり前が当たり前でない社会が今ある現実。弱者に差し伸べるべきなのが社会、大人、親の手なのに。2023/06/29
hirokun
133
星5 貧困の連鎖、ネグレクト、家庭内暴力、最近もマスコミで報道されるケースが頻発しているが、子供を守る部分については、一個人の問題ではなく、共同体として手を差し伸べ、最低限のサポートをすることは、憲法の規定以前の問題として対応していくことが必要。 自分自身は幸いそのような環境に陥らずに済んだが、今後の共同体をより基盤の強いものにしていく上においても、必要不可欠な部分だと思う。 長編であるものの、作品に引き込まれ、一気読みした。2023/07/01