権力の劇場 中国共産党大会の制度と運用

著者名：呉国光【著】/加茂具樹【監訳】

中央公論新社（2023/05発売）

• ISBN：9784120055805

内容説明

一党支配の「正統性」はどう作られ、守られてきたか――世界で初めて中国共産党大会を「制度」として分析し、中国共産党100年の歴史のなかで、毛沢東から習近平にいたる権力者たちが築きあげた形だけの「最高指導機関」の謎を解き明かす。第20回党大会を解説した日本語版のための補章を収録。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[BLACK無糖好き]

中国の権威主義体制における指導者は、エリート集団内の競争を制することで正統性を確保する反面、権力闘争の敗者や一般民衆からの支持を常に気に掛ける「正統性の赤字」を抱えている。本書は、指導者がこれを克服するための手段として共産党の党大会を位置づけ、党大会の制度を操作して正統性を獲得しようとしてきた歴史を詳細に描いている。著者自身も大会の報告文書起草に携わった経験もあり、よりリアルな内実が窺える。大会開催の一年以上前から十分な根回し、工作を経てショーの開演を待つ。そして厳かに舞台の幕が開く。

2023/12/09

[K.C.]

町内会から株主総会、議会まで、最高意思決定機関はある種「セレモニー」であり「正当性を持たせる」ものだと思っているが、それを如実に示した大著。意思決定は、その機関の開かれるかなり前から始まっていて、そのタイミング、非公開の人選のプロセスを回せる者が勝者であることがよくわかる。折しも、中国の外相に相当する人が罷免された直後でもあった。

2023/07/27

[TAMON BOLIVAR]

中国共産党指導部が、中国共産党大会という民主主義的な型を持った制度を利用してどのようにして権力を正統化しているかについて、分析した本。重要なことは、いわゆる民主主義国家であることの必要条件である議会を通して国民による承認を受ける民主主義国家の制度とは異なり、中国共産党大会がむしろ権力側を白紙委任するような制度なっており、とても民主主義的な国家になる余地がないということである。

2024/09/21

[papahaba]

中国共産党全国代表者会議をテーマに中国共産党政治の最大の課題（正当性）を、いかに制度操作で造り上げるかをトップの強さを歴史背景も変数に、分析している。中国政治の内幕がリアルに分かると共に、「民主化」は不可能と断じている。

2023/12/19