内容説明
作家として、旅行者として、そして生活者として日々を送るなかで、感じ、考えてきたこと――。読書に没頭していた子ども時代。日本や異国を旅して見た忘れがたい風景。物語を創作するうえでの覚悟。鳥や木々など自然と向き合う喜び。未来を危惧する視点と、透徹した死生観。職業として文章を書き始めた初期の頃から近年までの作品を集めた、その時々の著者の思いが鮮やかに立ちのぼるエッセイ集。(解説・河田桟)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふう
86
『物書きを始めた初期の頃からの仕事をまとめた』エッセイ集。旅先での経験、植物や動物のこと、出会った人々のこと、社会のできごとと、内容は多岐にわたり、これがあの作品に繋がっているのかなと思い出しながら読みました。難しい内容もあって、読み終えるのに時間がかかってしまいましたが。 やさしい目差しとしなやかな強さを合わせ持ち、どんなときも足はしっかり自然の地に着いている。その自然から伝わってくる繊細な光を言葉に換えて読者に届けてくれる。梨木さんの作品を読んで感じていたことをさらに深めてくれるエッセイ集でした。2023/06/19
piro
44
様々な媒体に掲載されたエッセイなどを集めた一冊。時期もバラバラなのであまりまとまりは無く、話題も色々な方向に広がっています。宗教理念の様な難解な一節があったり、自然の中で丁寧に過ごすさまを語られていたり、梨木さんの物事に対する真摯で実直な姿を垣間見られた一冊でした。バーチャル化が進む今、「日常のリアリティ」の大切さには大いに共感。そして毎度の事ながら、梨木さんの植物や鳥類に関する知識の豊富さには驚きます。読んでいるだけで自分の世界が広がっていく気がする、そんな一冊でした。2023/12/22
エドワード
40
梨木香歩さんは思索の人であり、論理の人であり、探求の人である。彼女が日々考えていることの宝箱。レンジが広い。青少年の心、文学、森や川や海、動植物、生態系、衣食住の文化。料理の話が結構多く、美味しい表現が上手いのはさすが。旅の話題が豊富だ。淡路島、富山からイギリス、アイスランド、エストニア。彼女が越そうと思った家が宗教哲学者M氏の屋敷だった話も興味深い。趣きある建築が最後は更地になる顛末は悲しいが日本の現実だ。鳥への関心も深く、風力発電に野鳥がぶつかる話は心痛む。「創ることは生きること」の言葉が印象的だ。2023/08/11
まさ
30
初期の頃からの時々を綴ったエッセイで、以前に単行本でも読んでいるのにとても新鮮に感じられます。やはり、梨木さんの日頃からの真摯な姿、植物を通した慈しみなどが見えてくるのだ。なかでも「家の渡り」はとても素敵。ある家との出会いや住んでいた方との邂逅、その家を通して梨木さんの考え方が溢れてくるよう。それが私を満たしてくれます。2023/06/06
いっちゃん
26
梨木さんの2004年からのエッセイ。母の友に掲載されたやつはリアルタイムで読んでいた。たった3回。梨木さんのエッセイ、お菓子に例えると月餅。みっちり詰まってるイメージ。あぁこの辺りの経験があの本のあの辺りなんだろうなぁと思いながら読みました。今は与那国島で馬飼になっている河田さんとの対話、最後に解説も書かれている。与那国島に行ったことがあるので、あの土地にこんな方がおいでるのかと思ったり。買いたい古家の持ち主だったМ氏はおそらく船本弘毅さんだろうかとあたりをつけたり。いろいろ面白かった。2023/10/03