集英社インターナショナル<br> 異性装 歴史の中の性の越境者たち(インターナショナル新書)

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集英社インターナショナル
異性装 歴史の中の性の越境者たち(インターナショナル新書)

  • ISBN:9784797681178

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内容説明

衣服によって性の境界を超える異性装。古くは男装で戦う巴御前から、男女のきょうだいが入れ替わる「とりかへばや物語」、歌舞伎「三人吉三」、シェイクスピア「ヴェニスの商人」など、異性装は歴史の中の物語に多く描かれてきた。それらにはどのような意味が込められているのか。また、現代のアニメ、マンガ、映画、演劇、BLなどの文化にどう生かされているか。物語に描かれた異性装を軸にジェンダーの社会的、文化的な在り方を多様な分野の研究者八人が論じる。

目次

序章 古典の中の性の越境者たち――物語、演劇に描かれる異性装 中根千絵
物語、演劇上の異性装――性の越境を考えるヒントとして
時代を超えての多様な生き方
性がゆらぐ時
武装する女性――アマテラスから巴御前へ
男女入れ替わりの恋愛物語『とりかへばや物語』
日本中世の女装、男装の恋愛物語
歌舞伎に見られる異性装
男性集団、女性集団の演劇
『南総里見八犬伝』の女装する信乃
表現媒体と今後の異性装の物語
第一章 異性装を解いた彼ら/彼女らはどこへ向かうのか 本橋裕美
古くて新しい異性装
アマテラスの異性装
『とりかへばや物語』の異性装
『とりかへばや物語』の男君とヤマトタケルの異性装
古代の異性装におけるジェンダー
『花ざかりの君たちへ』の結末から
『風光る』の異性装のゆくえ
異性装の魅力とその先へ
第二章 装いと身体――変奏する『とりかへばや物語』 東望歩
『とりかへばや物語』は二つある?
男装する女君たち
「走る」少女たち――「男装」以前
「性を装う」ことの射程――『とりかへばや物語』の翻案と髪
異性装と「ハッピーエンド」
異性装の物語から身体交換の物語へ
入れ替わる身体の行方
第三章 異性装の恋――異性愛と同性愛が交わる場所 江口啓子
異性愛と同性愛を内包する物語――タイドラマ『The Shipper』を例に
異性装の条件
表現媒体による異性装の物語の違い
『児今参り』の両義的な主人公
児の女装
姫君と女房の「添い臥し」の習慣
女房と姫君の恋は成り立つか
『新蔵人物語』――物語史上、最も美しくない主人公?
新蔵人の男装の理由
女性にとっての「幸福な結末」とは
クィアを内包する古典文学
第四章 巴 「女武者」像の展開 森田貴之
『平家物語』の巴
『源平盛衰記』の巴
巴と板額
謡曲の巴
浄瑠璃の巴
巴の物語のさまざま
マンガ作品の巴御前
大河ドラマの巴
変奏を続ける物語
第五章 歌舞伎、異性装、そして「なりたい」女たち 日置貴之
歌舞伎のなかの異性装
黙阿弥の「女書生」
ジェンダーを越境するせりふ
「竹次郎事たけ」という補助線
歌舞伎の周りの女性たち
役者になりたい!
第六章 シェイクスピアのオールメイル上演の愉しみ方 阪本久美子
観劇という体験
配役による「事故」
シェイクスピアの時代の女性役
異性配役と虚構性
ジェンダーと虚構性
オールメイル上演と観客
日本のオールメイル上演の特異性
『じゃじゃ馬馴らし』の上演
様々な取り組み
スタジオライフの場合
虚構の女の子たち
女はこわい?
特殊な配役のさらなる可能性
第七章 稚児と〈男の娘〉 伊藤慎吾
前口上
二〇〇九年のコスプレ広場
〈男の娘〉ブームの周辺
〈男の娘〉の専門誌・図書の出現
ライトノベルとその周辺
ライトノベルの〈男の娘〉
非女装系
恋愛趣向
ジュブナイル・ポルノ
時分の花
稚児の美の再発見
稚児と〈男の娘〉
画像リスト
引用文献・参考文献リスト

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

よっち

36
性を越境する異性装になぜ我々は惹かれるのか?そうした物語にはどんな意味が込められているのか。伝統的な男女観が崩れ、男女らしさが問い直されている現代、異性装を軸に社会的、文化的な在り方を気鋭の研究者8人が論じる一冊。男装で戦う巴御前から「とりかへばや物語」、歌舞伎「三人吉三」、シェイクスピアの「ヴェニスの商人」など、歴史の中の物語で多く描かれてきた異性装。マンガやラノベ、宝塚や男の娘などもテーマとして扱いながら、様々なフィクションの形で異性装がどういう位置づけで描かれ、語られてきたのかを興味深く読みました。2023/03/07

活字スキー

20
微妙。実際問題として人間には多様な性があり、その装いもまた多様であるということを様々な角度から論じてくれて情報量もけっこう多いのだけれど、正直もう少し読み易くまとめてほしかったな。どちらかと言うと、創作物における表現や解釈の話よりも、実在の異性装者の話をもっと読みたかった。川島芳子とかシュヴァリエ・デオンとか。みんな大好き巴御前のリアルはどんなだったのかな。マジで素手で首ねじ切ったりしたのかしら。キュンです!2023/05/01

佐倉

14
とりかえばや物語から稚児、歌舞伎や宝塚、男の娘まで。創作における異性装の論文アンソロジー。男装の女性と女装の男が出てくるとりかえばや物語だが、その可変性は男女で異なるという指摘、男装の武者であるがゆえに時代時代の女性像が反映される巴御前、異性による異性への演技が起こす表現の可能性、異性が排除された演劇の体制それ自体が新たな創作を生み出すなど面白い話が沢山。この中で一番身近に感じたのは最後の『稚児と〈男の娘〉』。論としては取っ散らかっている感じがあるが、現在進行形で答えが出ていない話ゆえか。2023/10/29

朝ですよね

5
古くは男装してスサノオに対峙するアマテラスから、日本の文学は異性装を描いてきた。とりかへばや物語の原作は散逸しており、改作されたものが現代まで伝わっている。昔の評論(無名草子)によると、古本は生理的現象や身体に関する表現が過激で、展開や設定も"まことし"が感じられないものだったという。異性装の登場人物は幼さや美貌が設定されているケースが多いが、新蔵人物語は平均的な容貌と見られる設定なのが特徴的。2023/11/04

狐火

2
複数人の論文本。とりかえばや物語を基軸に異性装を論じるのかと思いきや、最後は男の娘まで言及が入るという。 序盤は古典に素養があることが前提。私はざ・ちぇんじがでてくるあたりでようやく親近感がわいた。そしてこの本で風光るの最後を知る(ネタバレ注釈はあったけど読み飛ばさなかった) 現代のラノベ文化も体系化、歴史的文化的背景から研究すると面白いんだろうけれども、アレを真面目に捉えるかーという思いもあり。。まぁ文化に貴賤なし、ですよね。2023/04/01

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