内容説明
政治・社会理論およびメディア理論を参照しながら、従来のジャーナリズム論の枠組みを超えたニュースと政治の批判的研究の新たなアプローチを提示。原発事故や沖縄問題の事例にニュースの政治的機能を明らかにするとともに、今日のデジタル環境とポスト真実の政治の中で加速化するジャーナリズムの「危機」を独自の視座から分析する。
目次
はじめに
第I部 ニュースの政治社会学とは何か
第一章 「ニュースの政治社会学」の現代的展開
1 ニュースメディアの現実構築機能
2 ニュース研究の系譜
3 ニュースメディアと「政治」の関係をめぐる研究の発展
4 「ニュースの政治社会学」の分析戦略の構想
第二章 ニュースの批判的研究の再検討――「意味づけをめぐる政治」から「ニュースをめぐるメディア実践の政治」へ
1 批判的コミュニケーション論と「意味づけをめぐる政治」
2 ニュースの言説分析
3 ラディカル・デモクラシーの言説理論における「実践」と「秩序」
4 ニュースをめぐるメディア実践の政治
第II部 ニュースはいかなる政治的機能を果たすのか
第三章 原発事故をめぐるメディア経験の政治性――チェルノブイリ原発事故報道の言説分析を中心にして
1 原発事故をめぐる「危機」と「日常」
2 チェルノブイリ原発事故のメディア経験
3 対抗言説の編成と政治的意味作用の再活性化
4 社会秩序、政治的なもの、そしてニュースメディアの言説実践
第四章 沖縄問題をめぐるメディア言説と「境界線の政治」
1 戦後日本の「平和」と「沖縄」
2 沖縄問題の初期の展開と境界線の政治
3 沖縄ローカルメディアの「反基地」言説
4 「普天間基地移設問題」報道で展開される境界線の政治
5 デジタルメディア環境の中の沖縄問題と境界線の政治の行方
第III部 ニュース文化はどのような危機に直面しているのか
第五章 「ポスト真実の政治」再考――ニュースの政治社会学からのアプローチ
1 ニュース研究の分析対象としての「ポスト真実」
2 フェイクニュースとポスト真実
3 ポスト真実の政治をめぐるメディア研究
4 ポスト真実の政治の批判的研究のために
第六章 現代日本におけるニュース文化のレジームとその「危機」
1 ジャーナリズムの「危機」
2 ニュース文化のレジーム
3 現代日本のニュース文化の危機の諸相
4 ニュース文化の再生に向けて
あとがき
引用・参照文献