内容説明
65歳、元大学教師。リベラルで、しがらみのないインテリのつもりだった。まちがえた選択をし続けて65年。どうやら私は、社会から取り残されたらしい。
フロール賞受賞のほか、ゴンクール賞、フェミナ賞、ルノードー賞、アカデミー・フランセーズ小説賞、ジャン・ジオノ賞の6賞候補! 現代社会への痛烈な批判を込めた超弩級の注目作!
かつてタレント歴史学者を夢見たロスコフは、落ち目だった。95年に「冷戦下米国のソ連スパイ事件」を巡る書籍を刊行したが、翌日CIAが機密解除、本は一夜にして紙くずに。妻とは離婚し大学を退職、酒浸りだったロスコフは、同性愛者の娘のフェミニストの恋人に刺激され、研究を再開、サルトルやボリス・ヴィアンと親交があったアメリカの詩人・ウィローについての書籍を刊行する。客わずか5人の出版記念トークショーの席上、ロスコフはウィローが黒人であることを記述しなかった理由を問われる。翌朝掲載された匿名のブログ記事が炎上し、ロスコフはレイシストだという非難にさらされる。さらに自分を擁護するツイートに返信したロスコフは、炎上を煽ってしまう。ツイートした知人は、極右政党に入党していたのだ――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
261
2021年度のフランスの6大文学賞の話題を独占しフロール賞に輝いた著者の第2作目となる問題作ですね。65歳の不遇の元大学教授ジャン・ロスコフは最初の著作がパッとせず妻とは離婚し、同性愛者の娘のパートナーから刺激を受け、アメリカからフランスへ渡った嘗ての文学者ウィローについての著書を刊行する。だが彼が黒人である事を隠していたとみなされブログ記事が炎上してレイシストと非難され私生活にも危険が及ぶ最悪の事態となるのだった。本書の舞台は2025年のフランスという近未来小説で実はウィローも存在しない架空の人物です。2023/07/10
たま
56
とても技巧的な小説。60年代生まれのフランス人が50年代にフランスで客死したアメリカ詩人の評伝を書く。黒人と言う要素を無視した分析がネットで炎上、批判が拡大、日常生活も脅かされる。インテリとしてのポジション取りや著書の内容とは微妙にずれた炎上は練り上げられた設定で、娘の恋人をはじめ言論界の批判の舌鋒の鋭さ(日本と違う!)にも驚かされる。アメリカ的ポリコレへの反応も興味深い。しかし私がいちばん唸ったのは、この自己愛自己憐憫まみれの自堕落な語り手が【こんまり】さんのファンであること。⇒ 2023/12/22
Greatzebra
17
これは、とても面白かった。用語がわからないので検索しまくりながら読んだ。ロスコフのやったことがどうして問題になるのか、日本人たる私にはあまり理解できない。そこまで炎上することなのか?黒人の人種差別問題は日本人が考えている以上に深刻なのだろう。文化の盗用という言葉もピンと来なかったが、この本を読んである程度は理解できた。しかし、いずれにしてもロスコフの対応はほとんど間違ってる。こじれた老人だ。政治家や芸能人でも同じような炎上をしている高齢者がいる。私もロスコフに近い年齢なので、老害にならないよう注意したい。2025/08/17
Matoka
17
おもしろかった…。ジャン・ロスコフと同じで自分もwokeではなくいつも間違った選択をしてしまい、プライドは高く意志が弱い。65歳で白人で男性の彼と何ひとつ共通項はないのだが、何か自分の至らなさを刺激された。詩人ロバート・ウィローは実在するのか思わず調べてしまった。2024/07/13
本の蟲
15
滅法面白いうえ、構成も巧みで振り回された久々の大当たり。ジャンは元大学講師。65歳白人。若い頃出した本で大恥をかき、アル中になり妻とは離婚。80年代の人種差別反対闘士だった過去が唯一自慢で、リベラル・進歩主義を自認していたが、娘の恋人からは「一から勉強する必要がある」と非難される。定年後再起をかけて、歴史に埋もれたある米国人詩人の半生記を出版するが、詩の内容と政治志向に焦点をあてたその本は「彼が黒人という事実をあまりに軽視している・歴史の漂白・文化の盗用・著者はレイシスト」と大炎上してしまう(続①へ2023/05/22
-
- 電子書籍
- 聖女のはずが、どうやら乗っ取られました…
-
- 電子書籍
- 二度目の転生は兜でした 13
-
- 電子書籍
- ホストにハマって風俗で働いた話 14 …
-
- 電子書籍
- 病を「腸」から攻略する マイクロバイオ…
-
- 電子書籍
- きっかけは小さな嘘【分冊】 6巻 ハー…




