内容説明
近代国家への道を歩み出した明治日本。国家の「知」を支えるべく政府によって帝国図書館が設立された。しかし、その道のりは多難であった。「東洋一」を目指すも、慢性的な予算不足で書庫も閲覧室も狭く、資料は溢れ、利用者は行列をなした。関東大震災では被災者の受け入れに奮闘。戦時には所蔵資料の疎開に苦しんだ。本書は、その前身の書籍館から一九四九年に国立国会図書館へ統合されるまでの八〇年の歴史を活写する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
123
中島京子さんの小説「夢見る帝国図書館」を読んで、樋口一葉や夏目漱石たちが利用した雰囲気に浸りたくなり、上野の国際子ども図書館(旧帝国図書館の建物)を訪ねたことを思い出す。納本図書館という国立図書館本来の使命が満たされない不幸な80年を経て、戦後、国立国会図書館への統合で突然幕を閉じる帝国図書館の苦難の歴史がよく分かった。「日本では図書館が専ら本を無料で借りられる施設として漫然と捉えられ、偏に知を蓄積して活かす「アーカイブ」の考え方が国民に理解されていない」(根本彰先生)など図書館のあり方を考えさせられる。2023/07/09
さぜん
50
日本の近代図書館の歴史。帝国図書館の設立当初は今のような図書館の姿はない。利用制限はあるし、誰もが自由に本や資料に触れることはできなかった。西洋を真似ることから始まる日本の近代化は図書館においても同様で主軸がはっきりしない。図書館設立に熱い思いを抱いた人々は、政治に振り回され予算も下りず過酷な環境の中闘った。思想善導機関となった暗黒の時期を経てアメリカの民主主義政策の下、帝国図書館は国立国会図書館へと統合される。改めて図書館の存在意義を考えさせられる。2023/08/25
軍縮地球市民shinshin
22
帝国図書館の通史がまさか一般向けの新書で読める日が来るとは。前史である書籍館、浅草文庫、東京書籍館、東京府書籍館、東京図書館までも含んでおり、特に明治初期に図書館行政が変転したこと、念願の1897年の帝国図書館誕生まで詳述されており大変良かった。前史の5つの図書館は国の中央図書館ではなく公共図書館の要素が強いというのは面白い。戦後は国立図書館と改称していたが、国立国会図書館が開館すると間もなく併合された。国立国会図書館と国立図書館と二つの国立図書館組織が僅かながら併存していた時期があったことを知った。2023/07/12
どら猫さとっち
13
本書を読もうと思ったのは、中島京子「夢見る帝国図書館」を読んだことからだろう。東洋一の図書館の秘話を集めた名著。理想と現実、挫折もあれば成功もある。数々の著名人も通い詰めた知の宝庫。関東大震災や第二次世界大戦と、激動の時代もあった。そして戦後、国立国会図書館と統合。誰も知らない知の日本史が、本書にある。図書館の在り方について、もう一度考え直す機会を与える一冊でもある。2023/09/30
スターライト
13
明治維新後、政府だけでなく志ある人々も日本の近代化に向けて動き出したが、国立図書館設立の運動もそうした者たちによって作り出された。本書では帝国図書館の前身である書籍館誕生から戦後、国立国会図書館へとその使命を引き継ぎ、現在は国際子ども図書館となった帝国図書館の歩みをコンパクトにかつ出来るだけ多岐にわたって描いた書である。貴重な資料の保存と国内ばかりでなく海外の資料の収集、学生・研究者・庶民の研究・閲覧、資料の分類、狭隘となった施設の拡充と国との難航する交渉など、その歴史は苦難を極めた。書物を愛する人必携。2023/05/22




