岩波新書<br> 軍と兵士のローマ帝国

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岩波新書
軍と兵士のローマ帝国

  • 著者名:井上文則
  • 価格 ¥1,056(本体¥960)
  • 岩波書店(2023/04発売)
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  • ISBN:9784004319672

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内容説明

古代世界において繁栄を極めたローマは,一方では,対外戦争や内乱を繰り返す戦闘姿勢の国家であり,兵士が皇帝位をも左右する軍事体制の国家であった.建国から西ローマ帝国滅亡まで,軍隊と政治・社会との関わりを多角的に追跡,兵士たちの生涯にも光をあてて新たなローマ史を描き,その盛衰をユーラシア史のなかに位置づける.

目次

序章 凱旋門とサトクリフとイエス――ローマ帝国と軍隊
戦勝を讃える都のモニュメント
児童文学に登場するローマ軍
イエスを十字架に架け,パウロを保護したローマ兵
軍と兵士を通して見るローマ帝国
手薄だった後期ローマ帝国軍の研究
ローマ史の流れ
第一章 市民軍から職業軍人の常備軍へ――ローマ帝国軍の形成
古代世界のなかのローマ帝国の軍隊
エトルリア人の王が創り上げた市民軍制度
歴史家ポリュビオスの描くローマ軍
市民軍の危機と職業軍人の誕生
軍団の半常備軍化
カエサルの軍隊
アウグストゥスによる常備軍化――「兵民分離」体制の確立
第二章 「ローマの平和」を支える――前期ローマ帝国の軍隊
理想的なローマ軍?
軍の組織
軍団(レギオ)
補助軍(アウクシリア)
辺境に配備された軍団と補助軍
戦場における軍団と補助軍
イタリア本国の軍事力
皇帝に忠誠を誓う
帝位を左右する
ローマ帝国の軍事戦略?
攻撃姿勢の帝国
緩むローマ軍
兵士たちの日常
インムネスとプリンキパレス
百人隊長の任務
軍事訓練は行き届いていたのか?
帝国統治の要
第三章 軍制改革と権力闘争の狭間――変容するローマ軍
五賢帝時代に始まるローマ軍の変容
転回点としてのマルコマンニ戦争
セプティミウス・セウェルス帝の軍制改革――兵士の優遇
新たな敵の出現と軍人皇帝時代の混乱
ウァレリアヌス帝の分担統治
機動軍の形成
ガリエヌス帝の機動軍――騎兵部隊の創設
徹底していく能力主義
バルカン半島出身の軍人の台頭
軍人皇帝たちの機動軍
変貌したローマ軍
ディオクレティアヌス帝の機動軍
増強された軍隊
コンスタンティヌス帝のローマ軍――完成した機動軍
第四章 イメージと実態のギャップ――後期ローマ帝国の軍隊
ローマ軍の完成形態
『ノティティア・ディグニタトゥム』
東ローマの軍
西ローマの軍
深層防御体制の確立
歴史家アンミアヌス・マルケリヌス
辺境防衛軍
戦う機動軍
「主権者」としての機動軍
簒奪者を産む機動軍
激化する内乱
困難になる兵員確保と「蛮族化」
軍政と民政の分離
専業戦士としてのキャリア
兵士と市民――辺境防衛軍の機能と機動軍がもたらす災厄
危ういローマ軍
第五章 異民族化の果て――崩壊する西ローマ帝国の軍隊
ゲルマン民族の大移動の始まり
アドリアノープルの敗戦――東方の機動軍の損傷
西方の簒奪帝との戦い
スティリコのローマ軍――同盟部族軍への傾斜
アエティウスのローマ軍――同盟部族軍への依存
西ローマ帝国最末期の軍隊
辺境防衛軍の消滅
終章 ローマ軍再論――ユーラシア史のなかで
常備軍を支えたシルクロード交易
シルクロード交易圏への接近
「帝国の時代」の終わりとローマ軍のプロ化の進展
ユーラシアン・インパクトがもたらした同盟部族軍への依存
東ローマ帝国はなぜ生き延びたのか?
ローマ帝国と地中海世界,そしてヘレニズム世界
あとがき
主要参考文献
図版出典一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

123
官僚制が未発達な古代ローマでは、文民の元老院議員が指揮官に任じられた軍隊が軍務以外の行政も担当し、市民権保有者しか入隊できないため軍こそがローマだった。つまり当時のローマは軍と国民が一体化した、理想的な意味での軍国主義国家といえた。しかし帝政以後に職業軍人制を強化すると文民統制が失われ、ローマ市民が兵役を嫌うようになって蛮族を兵士に採用したため内乱が相次いだところへゲルマン民族大移動に見舞われ、西ローマは滅亡した。平和を求めるなら軍事や戦争について知らねばならないと、無知な現代日本人に警鐘を鳴らしてくる。2023/06/11

Nat

38
図書館本。ローマ軍の歴史の変遷がとてもわかりやすく解説されています。おススメです。ローマ軍の衰退から考えた西ローマ帝国の滅亡の状況や、西ローマ帝国と東ローマ帝国の違いにも簡単に触れられていて、納得できるものでした。2024/01/28

サアベドラ

38
共和制での創設から西ローマ帝国における消滅までのローマ軍団の歴史を略述した新書。2023年刊。著者の専門は軍人皇帝時代。内乱を治めたアウグストゥスによって職業軍人による常備軍として各属州に配備され、一定の完成を見たローマ軍であったが、続く政治的混乱を経て内乱や外圧への対応のため中央の機動軍と辺境防衛軍に分離し、機動軍は皇帝の私兵の側面を強める。加えて兵員不足などから同盟部族部隊の比重が高まり、財政的負担に耐えられなくなった西ローマ帝国側の軍団は崩壊へ向かう。断片的なローマ軍の知識の点と点をつなぐ良書。2023/08/02

よっち

37
建国から西ローマ帝国滅亡まで、軍隊と政治・社会との関わりを多角的に追跡、兵士たちの生涯にも光をあて軍事体制の国家としての新たなローマ史を描いた一冊。市民軍から常備軍へと変わっていったローマ帝国軍の形成、軍団と補助軍で構成された前記ローマ帝国の軍隊、軍制改革と権力闘争で変容するローマ軍、東西に分かれた後期ローマ帝国それぞれの実態とギャップ、ゲルマン民族大移動で始まった西ローマ帝国軍の同盟部族軍化・異民族化とその崩壊、東ローマ帝国はなぜ生き延びたのかなど、周囲とも比較しながらの考察はなかなか興味深かったです。2023/04/16

kk

33
図書館本。ローマ帝国の歩みを軍制の変遷といった視点から把握しようとする試み。古代四大帝国の連衡による東西ユーラシア連結がローマ勃興の源であったとし、気候変動等のユーラシアン・インパクトによる交通不良によって国勢が傾く中、これに対するローマの軍事的なソリューションが軍のプロフェッショナル化であったとのご説。軍事制度についてはミクロな説明が多いものの、全体としてスケールの大きなご主張。著者は東洋史の宮崎市定に私淑した由だが、それも納得の論旨。見慣れぬ固有名詞が多いので、索引を附してもらえたらベターかな。2023/04/27

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