内容説明
一人の男を好きになった。
自分にとって最後の恋になるだろう、という強い予感があった。
人として、女として、生きるために。
直木賞作家が描く「最後」の恋。本当の、恋愛小説。
「素直な感動に満たされた。窪さんがこんな小説を書くなんて」ーーー唯川恵「解説」より
赤澤奈美は四十七歳、美容皮膚科医。
夫と別れ、一人息子を育て、老母の面倒をみながら、仕事一筋に生きてきた。
ふとしたことから、元患者で十四歳年下の業平公平と嵐に遭ったかのように恋に落ちる。
頑なに一人で生きてみせようとしてきた奈美の世界が、色鮮やかに変わってゆく。
直木賞作家、渾身の恋愛小説。
目次
目次
序章 バイカウツギ
一章 アスチルベ
二章 アザレア
三章 オシロイバナ
四章 アネモネ
五章 ユーカリ
解説 唯川 恵
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
M
58
タイトルとは真逆で、奈美は、実はいわゆる男っぽいサガのせいで、息子や周りの女らしいタイプから誤解を受けるんだろうなと歯痒くなった。黙々と仕事をして経済的に家庭を支え、大事なはずの身内やスタッフの感情の機微にはあまり気が回らず、性善説で。問題が起きても独りで抱えて黙々と解決しようとしてしまう。女だからそれを冷たいとみなされてしまう気がした。不器用で真摯な生き様を理解してくれる人に支えられてもいて安堵する。『すればするほどよくなる』その辺りは、奈美と公平が深く愛し合っていることが伝わってくる文節だった。2023/07/11
優希
51
トランスジェンダーの話と思ったのですが、恋愛小説でした。夫と離婚後仕事一筋にやってきた奈美が、ふとしたことで14歳年下の公平と恋に落ちます。頑なにひとりで生きていこうとしてきた世界が灰色から色彩を帯びたように見えました。純粋な恋愛小説と言っても良いでしょう。2024/02/13
おっしー
37
窪美澄作品、2作目。バツイチ子持ちの47歳の美容皮膚科医が14歳下の男と恋愛をする話。恋愛をすることで院長でもなく、母親でもなく女性になる。邪な気持ちのない純粋な恋愛だと感じた。話の中では年齢差があることに引け目を感じている描写はあれど、それを否定も肯定もせず、自然に描かれているのが個人的に好みだった。この苦難を2人で乗り越えた、みたいな展開だったら多分あまりのめり込めなかったんじゃないかな。家庭や職場の問題はあるし、ちゃんと恋愛をするのは難しいと思う。けど、恋愛をすることで女は女になる。良いじゃんね。2024/03/09
桜子
24
単行本で読んでいたけど、また読みたくなって今度は文庫で。幼い頃や青い春の時代の恋愛も、若かりし頃の恋愛も、そして大人になった恋愛も、どれもかしこも愛おしい。大人って歳を重ねたからではなく、大人として振る舞おうとする、大人として立とうとする人が大人なんだと感じさせられた。窪美澄さんの本は、それだけじゃない何かがあって、好きだなぁ^^2023/08/26
原玉幸子
21
著者『ふがいない僕は空を見た』の導入部と同じく、性行為の直截的な描写にグロテスクさを感じましたが、その感覚的なネガティブさは、人生は性と相互に纏綿とした関係にあることから来ているのだろうと、ふと。男女の年齢差は、古今東西恋愛のテーマには足り得ず、又「本当の恋」との言葉が軽薄に感じるのは、ずばり、性愛を通じて相手を特別に感じる、相手にとっても私が特別であって欲しいと感じること、と言い替えれそうです。「性愛行為は、パートナーだけとの秘密であることが愛そのもの(=大事なモノ)」と思いました。(◎2023年・夏)2023/06/10