内容説明
弟はあの病室のあのベッドの上で、完璧に優しかった――
病に冒された弟と姉との時間を描く表題作、海燕新人文学賞受賞のデビュー作「揚羽蝶が壊れる時」、
第二作品集収録の「冷めない紅茶」「ダイヴィング・プール」。
揺らぐことのない美をたたえ、みずみずしい輝きを放つ秀作群。
作家小川洋子の出現を告げる最初期の四篇に、著者あとがきを新たに加え、カバーデザインをリニューアルした新装版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ペグ
65
これは!濃密な、あまりにも濃密な作品集。洋子さんの初期作品がこんなに有機的で、官能的だったとは!2023/05/18
優希
45
静かな調べを奏でているような短編集だと思いました。冷ややかな空気感が瑞々しさをも感じさせます。古傷の片鱗に触れているようでも心地良い不思議さがありました。2024/01/07
おっしー
43
デビュー作を含む4編の短編集。どことなく「死」の雰囲気を漂わせながらも、パキッとしてる感じがあった。変にダウナーな感じにならずに、人の生死を抱えながら共に生きていくみたいな。「冷めない紅茶」がかなり良かった。何か特別な背景とか境遇があるわけではないんだけど、だからこそ持たざる者の屈折した心の動きが伝わってきた。主人公が同級生夫婦に覚えていた憧れの純度が高いこと。ガツンと特別なを見せつけられたわけじゃない。だけど、普段から満ちた生活を送ってるんだろうなって想像できる。この夫婦の描き方が淑やかで好きだった。2023/06/10
まさ
27
小川洋子さんに感じる真っ白の世界。死にもつながり、生は異物ですら思ってしまう。読むごとに、限られた空間に広がる白色は透明感を増し、広がっていく。その中で、自分の世界が自分なりに重ねられ増えていくから、魅力的なのだろうな。2023/04/30
メリー
23
完璧な病室、他短編 主人公の心模様、何とも複雑で読み進めるのがもどかしい。どの短編も、私小説を読んでいる様な気がして、心情は理解し難い。2023/03/27