内容説明
「深沢さんはアクマのようにすてきな人でした」。斬り捨てられる恐怖と背中合わせの、甘美でひりひりした関係を通して、稀有な作家の素顔を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
27
☆☆☆ 人の悪口を言わなきゃだめ、物をほめるとくれてしまう、こちらからお土産を持っていてはだめ、むしろお土産をいつもくれる。深沢七郎、面倒な人だけども、きっと強く惹かれるものがあるんだろうな。嵐山光三郎、篠原勝之、赤瀬川原平、南伸坊など、深沢七郎を敬愛していた人々もまた魅力的。石和鷹も気になった。2019/08/12
TakaUP48
24
嵐山光三郎の師匠=オヤカタが深沢七郎は、TVで生前葬を企画。自ら読経で参列はままならず、お茶くみでもやろうかと言い出す。繊細な感覚で、人間関係をバサッと切るオヤカタ。オヤカタの家・ラブミー農場の出入り事項16ヵ条は笑ってしまう。ギターリストとして日劇ミュージックで働き、楽屋で書いた「楢山節考」が中央公論新人賞。川端康成は大嫌い、谷崎賞では授賞式でヤクザ踊り。15年目にしてオヤカタに切られてしまった著者。関係修復をする前にオヤカタは亡くなる。オヤカタと光三郎氏との奇妙で暖かい師弟関係が綴られていた。2019/12/30
Bo-he-mian
16
映画にもなった「楢山節考」「東北の神武(ズンム)たち」の原作者・深沢七郎の弟子だった嵐山光三郎による人物伝。実は本書に先立ち、深沢氏が井伏鱒二や正宗白鳥ら大作家との交流を描いたエッセイ「言わなければよかったのに日記」を読んで、いかにも作家然としたインテリ先生方に対して、田舎から出てきた無学で純朴な青年のように描写される深沢氏の姿に、なんと朴訥として素朴な人柄だろうかと思っていたら、本書で描かれたまるで真逆の、偏屈でガンコで世捨て人のような人間像に、ズッコケというかひっくり返ってしまった(爆)。2021/10/11
Bartleby
15
天才・深沢七郎への著者の心酔ぶりがうかがえる。犬の忠実さだ。師匠の好きなものは自分の好きなもの。著者は“オヤカタ”からいつか関係を切られるのではないかとビクビクしている。そしてある時実際に切られる。しかし著者は、切れた関係を執拗に繋ごうとすることをオヤカタが誰よりも嫌うことを知り尽くしているため、決して自分からは会いにいこうとしない。弁明にも行かない。そのうちにオヤカタが死んでしまい…ときどき九鬼周造の『いきの構造』なんかも連想しながら読んだ。本書はどちらかというとBL的だけど。2022/12/27
koala-n
4
著者が私淑した特異な作家、深沢七郎との十数年に及ぶ交友を回想した小説。深沢七郎がかなり性格的に変わった人物だというのは知ってはいたが、まさかここまでの人とは思いもよらず、読み始めはちょっとあっけにとられた。が、少し読み進めていくと、理不尽さはありつつも、それなりの筋というか論理がなくもなく、惹かれる人はとことん惹かれるだろうことは理解できた(個人的にはかなり反発を感じた部分がある)。淡々とした筆致で描かれるエピソードの数々は、派手さはないがこの作家の人となりをよく表しているようだ。巻末のあとがきも良い。2013/03/26
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