内容説明
過去を思い出す行為である想起を通じて、想起者の体験へと接近し得る可能性を追求する。記憶痕跡論や記憶構成論等の主張を批判的に辿り、ギブソンの生態学的知覚論を経由することで「生きている想起」を説明可能な新たな記憶・想起論=生態学的想起論を構想する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shin_ash
3
生態心理学なる分野がある様で生態学的に想起を説明してみたのが本書の内容である。このシリーズでは3冊目であるが、ようやくギブソン的(生態学的)なものの見方の雰囲気がイメージできてきた気もする。そう言う意味では楽しく読めた本書ではあるが、ここで展開される想起の理解を身につけるのは難しい。それくらい常識の再整理が必要である。しかし、日常に照らせば納得な論考でもある。本書は想起と想像を明確に区別する。テーマは想起であるが、こうなると想像って何?と思ってくるし、物語って何?と気になってくる。想起が実体験に基づくかが2023/05/06
mad_mae
1
「想起(知の生態学の冒険)」を読み終えた。記憶については脳に貯蔵している印象があるが、正確な記憶は存在しないので、想起について考えることで人間が持つ記憶的なものはどのようなものかを考察していて面白かった。なんとなく分かると思ったのは、「”今ここ“にいる社会や環境、また自身の状態」によって想起は変容していくという点。過去の記憶は現在の視点でしか語れないため、かなり修正や訂正がかけられていく、と。2023/06/10