内容説明
人間はどのように世界を認識しているか?「情報」という共通言語のもとに研究を進める認知科学が明らかにしてきた,知性の意外なまでの脆さ・儚さと,それを補って余りある環境との相互作用を,記憶・思考を中心に身近なテーマからわかりやすく紹介.自分はしっかりしていると思っている人こそ,読むべきである.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りょうみや
29
鈴木氏の認知科学本4冊目。出版は本書が最初だが読むのは最後になった。後の3冊と内容はけっこう重複するので復習にもなった。これらの本で認知科学に興味を持ち読んでいくたびに自分の人間観、知性観が変わっていったのを感じている。認知科学はまさに必須の教養だと思える。難しいことを分かりやすく書いてくれているのだがそれでも質と量ともに骨がある。2016年出版だが自分の10版本は章ごとのブックガイドで2020年の本が入るなどしれっと更新されている。2022/10/29
テツ
18
みな自分の内側を揺るぎないものだと、信用できるものだと思い込んでいるけれど、人間は自分のことなんて何も解らず、コントロールすら覚束ないんだぜという気づきを与えてくれる。思考や感情に導かれての自らの行動一つ取っても何一つ信用できなくなってしまうな。本当はぼくたちが世界をどう知覚しているかということを知れば知るほど今までのあたりまえな世界との対峙の仕方に安心できなくなる。ぼくが会得した世界の姿なんて吹けば飛んでしまうような、蜃気楼のようなものなのだ。2022/10/30
koke
11
人間の知性は意識下の広大なプロセスを経て、揺らぎながら発展しているのだということが、門外漢にも分かりやすく大変面白かったです。例えば、セレンディピティといったものも、こうした揺らぎ、例えば重複波理論によって説明可能なのでしょう。動物の知性との比較やAIのことなども読めるかと期待したもののそうした内容に触れるところは少なかったです。学際的な分野でもあるため、一つの切り口で入門書を作ることも困難な作業なのだろうと想像します。ブックガイドとしてたくさんの書籍も挙げられており、色々手を出してみたいと思いました。2025/01/20
Mc6ρ助
11
この本も知っていることも少なくないとはいえ、目から鱗が一杯の本。我々は少ないリソースで巧妙に世界を認識しているのだった。でも、我思う我はだれ?という素人の素朴な疑問は、やっぱり、置いてけぼり(問い自体が無意味となるんだろうけど!?)。2018/04/12
izw
11
認知科学の入門書。人工知能、ロボット工学、脳科学、心の哲学の周辺分野として、あるいはそれらを含む学際分野として重要。知性・認知として、記憶、表象、思考について、人間のみならず、生物の知性の探求に広がり、人工物、社会システムにも知性を見出そうとしている。異分野の共通言語を提供しようとしているが、広がり過ぎて中でもまとまりきれていないらしい。2017/09/23