内容説明
本書は、経典の成立に関する二章と、その展開に関する二章との四章に分けてある。これを具体的に述べると、まず最初の二章は、経典の総体的な解説をしており、経典とは何か、原始仏教経典の成立事情はどうか、大乗仏教でも経典が現われたが、大乗経で述べられていることは仏説か非仏説か、仏説とは何を指すのか、経典の真偽はいかにして判定されるか、インド以来の経典の言語にはいかなるものがあったか、いつどのようにして経典が書写されるようになったか、書写の文字にはどのようなものがあったか、書写の材料はいかなるものであるか等を紹介した。そして、後半の二章では、われわれ日本の仏教者にもっとも親しい漢訳経典の由来を種々の方面から具体的に考察したものである。
感想・レビュー
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ひよピパパ
2
原始仏教の大家、水野弘元氏の著。表題のとおり、仏教経典の成立と流伝の歴史を紹介する。個人的には中国における訳経の様相が興味深かった。『西遊記』で有名な玄奘三蔵の他に、鳩摩羅什をはじめ、真諦や不空といった訳経僧の活躍があったこと、仏陀跋陀羅と鳩摩羅什の間に確執みたいなものがあったことなど、いろいろと教わった。最終章の「大蔵経とは何か」も各種刊本の由来等が解説してあり有益。2017/08/01
俊介
0
本書の主役はブッダでも各宗派の宗祖でも仏教教理でもありません。主役は経典自体とその翻訳家たち。 どんなに優れた思想でもそれが空気のように広がっていくわけもなく何かの媒体が必要。今と違い、その媒体となる紙的なものも十分にない時代でしかも交通手段も限られる。そんななかで、いかにして経典は編纂され、そしてそれが各言語に翻訳され各地に伝えられていったか、がつぶさにそして時にドラマチックに語られてゆきます。知らなかったことがたくさん。当時のインドの言語状況についても詳述されており、2018/12/21