内容説明
第163回直木賞受賞作! 犬を愛するすべての人に捧げる感涙作
傷つき、悩み惑う人々に寄り添う一匹の犬は、なぜかいつも南の方角に顔を向けていた。
2011年秋、仙台。震災で職を失い、家族のため犯罪に手を染めた男。偶然拾った犬が男の守り神になった(男と犬)。壊れかけた夫婦は、その犬をそれぞれ別の名前で呼んでいた(夫婦と犬)。人と犬の種を超えた深い絆を描く感涙作。解説・北方謙三
「少女と犬」を文庫で初収録。
※この電子書籍は2020年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fwhd8325
133
最終話のエピソードを匂わせることなく、6つのエピソードが綴られていきます。少し、消化不良な印象を感じるエピソードもありますが、7つめのエピソードですべてが収まります。多聞の存在感はとても大きく感じます。そして、各エピソードに登場する飼い主の方も短編ながらも深く描かれていると感じました。2024/02/15
しげき
84
犬が主役とあって常識では計れない不思議な物語。とにかく主人公の犬が賢い。私より人の心を読み取れて、しかも優しかったです(笑)我が家の犬はエサの時間になったら尻尾振ってるだけなのに。 ラストは泣ける結末。2023/10/16
小説を最初に書いた人にありがとう
82
2020年の直木賞作品。本作は犬を主役に「多聞」という名の犬が旅する中で出会う人達との6篇の短編集。東北から始まり、人に飼われながらも気づくと西の方角を見つめていて、どこかを目指していると思わせる多聞。出会う人達の人生に影響を与えながらも役目を果たすとまた旅立っていく。犬の心情を書くことは無く、あくまでも人から見た描写が逆に犬への愛情を感じる。裏テーマには東日本大震災で傷ついた人達へのエールもあり静かな感動作だった。九州での再会には心震えた。2023/08/03
Tadashi Tanohata
80
巻末の先生のプロフィールに「北海道生まれ」とある。「ちょっと待って、北海道には札幌あれば函館もある。長万部や女満別もあるぞ」とひとりごちながら札幌行きのpeachで読み始め帰路関空便のpeachで読了。帰路Pではかろうじてメガネのフレームで堰き止めて。「ありがとう多聞」2023/08/29
ヨノスケ
62
一頭の犬がつなぐ6つの連作短編集。出会う人達はそれぞれ悩みを抱えていて、読んでる私も息苦しく感じられた。この「多聞」という犬はそんな人々に献身的に寄り添ってくれる存在である。あの災害の地から始まるこの小説、犬が常に向いている方角に何があるのか?その謎が明かされるラストはまさに感動ものである。2023/10/14