内容説明
第163回直木賞受賞作! 犬を愛するすべての人に捧げる感涙作
傷つき、悩み惑う人々に寄り添う一匹の犬は、なぜかいつも南の方角に顔を向けていた。
2011年秋、仙台。震災で職を失い、家族のため犯罪に手を染めた男。偶然拾った犬が男の守り神になった(男と犬)。壊れかけた夫婦は、その犬をそれぞれ別の名前で呼んでいた(夫婦と犬)。人と犬の種を超えた深い絆を描く感涙作。解説・北方謙三
「少女と犬」を文庫で初収録。
※この電子書籍は2020年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しげき
174
犬が主役とあって常識では計れない不思議な物語。とにかく主人公の犬が賢い。私より人の心を読み取れて、しかも優しかったです(笑)我が家の犬はエサの時間になったら尻尾振ってるだけなのに。 ラストは泣ける結末。2023/10/16
Tadashi Tanohata
160
巻末の先生のプロフィールに「北海道生まれ」とある。「ちょっと待って、北海道には札幌あれば函館もある。長万部や女満別もあるぞ」とひとりごちながら札幌行きのpeachで読み始め帰路関空便のpeachで読了。帰路Pではかろうじてメガネのフレームで堰き止めて。「ありがとう多聞」2023/08/29
fwhd8325
146
最終話のエピソードを匂わせることなく、6つのエピソードが綴られていきます。少し、消化不良な印象を感じるエピソードもありますが、7つめのエピソードですべてが収まります。多聞の存在感はとても大きく感じます。そして、各エピソードに登場する飼い主の方も短編ながらも深く描かれていると感じました。2024/02/15
麦ちゃんの下僕
103
Audible+文庫本。読んでいて感じたのは、染井為人さんの『正体』に驚くほど印象が似ているなぁ~と(←パクり云々ではなく)。まず全体の構造…この作品の犬「多聞」も『正体』の逃亡犯「鏑木」も主役ではなく(←客観的に描かれるのみ)、多聞/鏑木が行く先々で出会った人々の物語を並べた連作短編集なんですが、多聞/鏑木の“旅”によって長編作品のように感じるんですよね。そして、馳さんは染井さん以上にとにかく容赦がない(苦笑) 読後感もかなり近いと思います。(↓)2025/04/09
dr2006
103
感動した✨一匹の犬(多聞)と関わった人々の岐路を描く連作。動物が主人公の場合、擬人化して言葉を話させるのも可能でむしろ簡単だろうけど、本作の犬(多聞)は言葉を話さない。だが、不思議と犬の強い意志と人を慮る言葉が伝わってきた。勿論、犬の言葉を想像した人が独白する場面を含めてだけど⒲多聞は様々な情況にある人々と短い期間関わり、その人の人生の変転を一緒に過ごす。やがて潮時になり立ち去るのだが、それは別の明確な目的があったからだ。納得の直木賞!馳星周は初読みだったが他の作品も是非読みたい。未読の方にもお薦め。2024/08/05