内容説明
血生臭い歴史が繰り広げられ現在も怪異が多発する、滋賀県!
棺桶に遺体が入らないので力任せに手足を曲げたら…〈甲賀市〉
床下から首のない地蔵が掘り起こされた! 〈東近江市〉
譲り受けた茶道の釜に老侍の生首が…〈長浜市〉
漁をしていたら全身が透き通った死骸が浮かんでいた〈琵琶湖〉
家賃の安いマンションに引っ越したら、事故物件だった〈大津市〉
「怪談最恐戦」にも参加、独特の怪談話を披露した話術の巧みである、滋賀県出身の講談師、旭堂南湖。
地元愛を爆発させつつ歴史ある滋賀の怪談奇譚を書き綴った怪談本。
・漁師の祖父が奇妙な体験した50年前のある夜「琵琶湖の 漁」
・家の神棚の下に埋められているという石、掘り出そうとしたら…「床下の明神石」
・滋賀ではよく見かける飛び出し防止の看板、それにまつわる奇妙な話「飛び出し坊や奇譚」
・山で遭遇した黒い靄が一人の登山客を覆うと…「綿向山の黒い靄」
また、講談口調で怪談を綴る「講談・村正の鎌」も収録。
じんわり怖いと不可思議が詰まった滋賀を堪能あれ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
高宮朱雀
15
個人的に都というと東京よりも京都のイメージが強く、歴史の上でも現在の関西圏には所縁ある場所が数多く存在するので、そういう意味でも曰く付きと呼ばれたりするのは無理はない。 勿論、歴史に関係なく、誰かのついた「嘘」が一人歩きして事実になったモノもあるだろうが、特に血腥い読後感を残した一冊。2023/06/21
わ!
8
「ご当地怪談シリーズ」は面白いですね。滋賀県をチョイスした理由は単に、そこ(古本屋)にあったからだけなのですが…面白かったです。さらに著者が旭堂南湖さんという、講談師の方だというのも面白い理由なのかもしれません。滋賀県だから「飛び出し坊や奇譚」というコーナーで、飛び出し坊やに絡んだ奇譚を集めていましたが、実際飛び出し坊やの奇譚は滋賀県に限らず、全国であるのでしょうね(なにしろ人形(ひとがた)だから…。それより何より旭堂南陵さんが亡くなられたのをこの本で初めて知りました。何度か講談を聴かせていただきました。2025/08/05
misui
7
奇譚寄りで怖さは程よく、なかなか完成度の高いご当地怪談本です。滋賀の人は誇っていい。「琵琶湖の魞漁」「ドレッドヘアの外国人」「マラソンランナー」「多賀の毒蛇」。「多賀の毒蛇」は前段の部分が怪談ではないけどとんでもなくて、地方に埋まってる話の掘り起こしという意味で特に欲しかったようなやつです。2023/10/31
おおかみ
7
古来より東西の交通の要所であった滋賀は数々の合戦の舞台でもあり、伝説も多く残る。本書収録の怪談も伝説にまつわる話もいくつかある。とはいえ大半はどこか不思議なお話といった感じで、信楽の狸や飛び出し坊を巡るものなどにわかには信じ難い忌憚もあり、奇妙なリアリティーを帯びている。各地を訪れる時に少しでも思い出せたら面白い。2023/10/29
qoop
6
奇妙さに寄ったご当地怪談集。これは場所柄というよりも著者ゆえなのだろうか。著者の作品ではこれまで語りを写した物を読むばかりだったからか(あ、アンソロジーでは読んでいるか……)、こういう話を書く人だったのかとその魅力に初めて触れた気がする。いつか高座で口演を聴いてみたい。2023/04/01