内容説明
伊藤若冲やチューリングが生み出した文化には、不思議な共通点がある。人間が創造する文化には、時代と場所を超えて自閉症的な側面があるのではないか。文化史の地層から「自閉文化」の鉱脈を掘り起こし、「健常」な近代を問い直す斬新な試み。
目次
はじめに
第1部 自閉症がつくる文化
第1章 若冲からチューリングへ
第2章 常数としてのマニエリスムと自閉症
第3章 自閉症とは何か
第4章 「自閉文化」の特徴
第2部 世界はそもそもパズルである
第5章 迷宮と蒐集──ルドルフ二世とアルチンボルド
第6章 「不思議の国」は「驚異の部屋」──ルイス・キャロルとアリス
第7章 名探偵・妖精・心霊──コナン・ドイルとホームズ
第8章 点と線──エリック・サティの奇想の音楽
第9章 缶詰が並んでいる──アンディ・ウォーホルの凍りついた宇宙
第10章 パズルと対位法──グレン・グールドの録音スタジオ
第11章 マシンと夢──村上春樹のジグソー・パズル
第12章 コンビニ空間──村田沙耶香と「世界の部品」
第13章 「おひとりさま」の可能性──上野千鶴子の「離脱の戦略」
第14章 ゲームと機械──榎宮祐のライトノベル異世界
第3部 ずれた世界でよりよく生きる
第15章 『アリス』のパラドクス──自己言及を字義通り生きる
第16章 笑いのワンダーランド──二つの世界
第17章 自閉症から認知症へ──プロセスと崩れ
おわりに
参照文献一覧
人名索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
読書熊
2
文化としての自閉を捉える2023/03/31
yoshiko
1
過去の著名人たちを「自閉症的」と括り検証することは、現在自閉症、自閉症グレイゾーンにいる人たちの社会的理解に繋がるアプローチになるのかな、と思いながら読んだ。ちびちび新しいものの見方があり、面白く読んだ。最後の認知症との比較も新たな気づきがあった。英語を軽くリスキング中なので、不思議の国のアリスを次のテキストに選ぼうかな。2025/06/29
しお
0
すごく良い本だった。「比喩的に言えば社会性とは、二個の点、場合によっては一個の点だけからでも円を見出す力です。」「こう考えると自閉とは一面では、外界に対して感覚的に開かれすぎている状態と見なせるのかもしれません。(中略)もしかすると障害を被っているのはむしろ、定型発達側の想像力なのでしょうか。」マニエリスムとサティ、ノーゲイムノーライフ、認知症などのトピックが良かった。掘り下げていきたい。2024/12/04