内容説明
大きな藤の木のある、壊されつつある家。真夜中に忍び込んだわたしは、そこに暮らした老女、ウィステリアの生を体験する。かつて存在した愛を魔術的に蘇らせる表題作。思いがけぬ大金を得、デパートで連日買い物を続ける女性の虚無を描く「シャンデリア」。いくつかの死、失った子ども、重なり合う女たちの記憶……研ぎ澄まされた言葉で紡がれる、美しく啓示的な四作を収録した傑作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
171
新年早々、川上熱がどうにも抑えられず本日2冊目。こちらは4編からなる短編集。純文学の香りが香ばしく、一気に読んでしまった。①有名人となった女が気紛れに地元の同窓会に行ってみたら②デパートで1日過ごす爆買い女③外国。女同士の恋愛の破局について④解体される豪邸に取り込まれる女。簡単に言うとそのような内容なのだが、こうやって書いてみるとちっとも面白さが伝わらない。しかしそこは川上の仕事。彼女の編み出す文章の力技に俺は引き込まれてむさぼり読んだ。人を選びそうな本だけど、川上マニアとしては素直に思う。素晴らしいと。2025/01/01
masa
66
女たちは迷っている。しかし迷いのない筆致で描かれるそれには、強さが漲っている。そこかしこに漂う圧倒的なカースト上位感と底意地の悪さ。僕のような底辺の男は少なからず怯むのではないだろうか。女の敵はあなたよ。あなたなのよ。あなたがいけないの。あなたが女を不幸にしたの。今日こそ何か起きるのではないかと期待するあなたは狂っている。津波で原発から放射能が漏れ、未知のウイルスとワクチンに蝕まれ、国家経済は破綻している。もう何もかもが起きた後なの。終わりなの。だからデパートのシャンデリアはあなたの頭上には落ちてこない。2022/05/07
エドワード
66
人の記憶にまつわる四編。標題作が傑作だ。ある女性の家の斜め向かいの古い洋館が取り壊されていく。老婦人が独りで住んでいた洋館。彼女は黒い服の女性に導かれて、ある真夜中に洋館の残された部屋へ入り、そこでかつて暮らした二人の女性一日本人のウィステリアとイギリス人教師一の夢を見る。子供たちに英語を教え、共に笑い、共に夕食を摂った。イギリス人教師が故郷へ帰らなければならなくなり、二人に永遠の別れが訪れた。古い家に染み着いた記憶。妖しくも哀しく甘いファンタジー。外国文学のような「マリーの愛の証明」も洒落ているね。2021/06/23
サンタマリア
52
今の世の中から見ると何かが欠落しているもしくは何かを得ることができなかった女性達が日常を歩いている。彼女達の歪みは彼女達の責任とは言えないが、その日常は彼女達自身が原因で確実に歪んでいる。そのような歪みの中を歩く女性達の背中はワンピースのファスナーが閉まらないままの後ろ姿のようであった。2021/07/18
Vakira
46
未映子さんは春さんとの対談本で春さん小説の解を探る質問の内容が気に入ってしまい、個人的未映子さん祭り始動。この本は短編集。自分以外は冷淡に他人を見る女性心理がたまらない。特に二度と出会わない他人なら冷淡を通り越して残酷になれる印象を受けました。今回は女性同士の恋バナ系な感覚。読中、僕はプチ残酷な女性になる。うんうん、これが未映子さんがCMで言っていた小説の存在意義ね。僕の読み方はほとんど2度読みしませんが、何とも理解出来なさそうで理解してしまう、この短編の登場人物の感性、それに惹かれ、また読んでみたいです2026/02/03
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