内容説明
江戸川乱歩賞作家の渾身作!
圧倒的リアルで描く、極上の歴史ミステリー!
祖母の形見は血塗られたシャネルスーツ
ココ・シャネル、エヴァ・ブラウン、アドルフ・ヒトラー、そしてひとりの日本人女性――
占領下のパリに秘された謀略とは?
祖母が遺したのは、血に染まったシャネルスーツだった。
遺品の謎を解くため、フリーライターの結城真理は疎遠だった母とフランスに赴く。祖母は第二次世界大戦中、外務省一等書記官の娘としてナチ占領下のパリにいた。その足跡を辿ると、驚愕の事実が。歴史上のある人物を巡る謀略が浮かび上がったのだ。
約80年の時を経て、祖母が胸に秘めていた秘密が明らかに!
【『マドモアゼル』(島村匠名義)改題作品】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
108
遺品×歴史ミステリの一冊。ストーリー展開と歴史の絡みが抜群に面白い。祖母の遺品の血に染まったシャネルのスーツは何を意味するのか。孫が謎を解くためにフランスへ…というストーリー。第二次世界大戦中に外務省一等書記官の娘としての祖母のパリでの生活を辿る過程は不穏と興味深さ全開。パリに漂うナチ占領下絡みの不協和音交え、当時の歴史を存分に感じられるのもいい。ココ・シャネルを始め実在の女性達と祖母との交流が謎に拍車をかけ、巻き戻されたあの瞬間には息を呑んだ。せつなさ、戦争の愚かさをきちんと盛り込んだ創造の世界、良き。2025/03/20
akiᵕ̈
40
フリーライター真理の元に不穏な電話がかかってきた事で疎遠状態の母が、そして亡くなっている祖母が関係している、世代を超えた壮大な真相に迫っていく現代パートと、祖母が懸命に生きていた1930年〜40年代パートが交錯しながら物語は進む。外務省で書記官をしていた父とフランスへ渡った祖母。その時代はヒトラー政権下の只中。そしてシャネルが頭角を表した時代。そんな時代背景と歴史に名を為す2人と絡み合う祖母の身に起きた真実は史実と絡み合って臨場感がすごい!そしてこの長旅は確執を持ち続けた母娘の心の氷が溶けた旅でもあった。2023/03/18
達ちゃん
28
現在と過去が交互に語られる歴史ミステリ。なかなか興味ひかれる展開で読み応えあって面白かったです。多くの人の人生をもてあそぶ戦争、当時を想像しながらの読了です。2024/01/09
しゃお
24
祖母の遺品にシャネルのものと思われる血染めのスーツが。その謎を追って母と二人でパリに飛んだ真理の現代パートと、祖母の千沙による過去のパートで描かれる歴史ミステリ。ココシャネルの謎多き人生に実在した人物を絡めて描かれるのは戦時下で浮かび上がる人の業の愚かさですが、だからこそ信念をもって行動する人々の強さは眩しい。けれどもその結末は哀しくも。それにしても親子三代の確執はどうにも感情移入しにくく、その点が少々残念かも。2024/03/23
miaou_u
18
自己啓発でもよく言われるが、母娘の確執は、祖母の代まで遡らないとわからない。そこを起点に戦火の巻き起こるパリ、ドイツを舞台に、歴史上の登場人物を絡めて繰り広げられる家族の物語。謎多きシャネルの黒歴史やヒトラーの愛人、エヴァ・ブラウンの人間像は「かもしれない」に彩られている。「平和をもたらすために必要なら、一人の人間を殺してもいいというのは、許されるのでしょうか」という千沙のつぶやきは、今まさに起こっている世界情勢への問いでもある。ラストに描かれる2014年のシャネルのコレクションを改めて観て、感慨に耽る。2023/04/08