内容説明
終戦後、満洲から引き揚げた宗方家。節子は失業中の夫、病床の父に代わって酒場を開く。妹・満里子は慣れない商売に疲弊する姉を歯痒く思うが、そこへ節子の昔の恋人が現れて……。美しき姉妹を中心に、敗戦後の日本で時流に乗って生きる人と目標を失った人、それぞれの生き方と葛藤が描かれる。小津安二郎監督の映画原作でも知られる長篇に、最晩年に執筆した「序の章」を加えた決定版、初文庫化。巻末に「映画「宗方姉妹」を見て」を付す。〈解説〉與那覇 潤
感想・レビュー
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双六
1
戦争に負けて変わってしまった日本人の美意識。宏、かっこよすぎ節子奥ゆかしくて昭和です。2023/05/01
なおぱんだ
0
敗戦後の急激な時代の流れに身を任せるようにつつましく生きようとする姉と、奔放で自分の生きたいように生きようとする妹の対照的な姿を見守る、病により死期を悟った父親の達観を描くことで、戦争という激動の時代を耐え抜いた新しい時代の明暗が伝わる作品でした。一家の生活を支える姉妹と事業に成功した青年に加え、青年とフランスで知り合った未亡人との愛人関係や、一家を支えようとする兵隊上がりの純朴な男の姿を絡めながら、時代に取り残されまいと前向きに生きようとする家族の人間ドラマとしての深みを感じさせてくれる作品でした。2023/03/30