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内容説明
作家と出会い、言葉と出会う
生きることの傍には、常に「言葉」があった
言葉が語らない「あわい」にこそ
たしかなる人生の道標がある
「あの日、この本を机の上に置いたとき、
のちに自分がこれとほとんど同じ経験をすることになるとは
思いもしなかった」 (本文より)
生涯の伴侶となる女性に『深い河』を渡した日から、
妻を喪い、死者に託された「何か」を生きる今に至るまで
河合隼雄、須賀敦子、小林秀雄、柳宗悦、堀辰雄――
自らの軌跡と重ねて綴る、特別な一冊
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
tamami
62
著者自身による、若き日から現在に至るまでの、作家との直接の出会い、あるいは言葉を通しての邂逅が、心にしみる文章を通して語られる。人生で訪れた折節の体験を経て、自身の変貌を促し思索を深めていく状況が、透徹する心で読み込まれた言葉とともに記される。その幾つかは、作者や作品の主人公が体験する出会いと別れであり、著者はその意味するところを自身のそれと重ね合わせて考察する。好奇心と自己探究に関わるアウグスティヌスの言葉、体験と経験の違い、書くという営みは亡き者に向かって言葉を送ることである…多くのことを教えられる。2025/12/11
薦渕雅春
25
内容は知らずに借りてみた。何というジャンルと言っていいのか?エッセイでもなく、哲学的な難しい内容だった。ただ、文章そのものは読みやすく分かりやすい。著者は慶應義塾大学文学部仏文科卒業との事だが、理系の人ではないかと感じる。〈「読む」と「書く」の関係は呼吸に似ている。そう感じたのは、本が読めなくなり、文章を書けなくなったときだった。〉深く吸うためには、深く吐かなければならない、と例えている。〈読書は習慣である。習慣にならない読書は、いつまでも「勉強」の域を出ず、「学び」には至らない。〉斬新な著述だと感じた。2023/07/13
mikky
16
この本について何をどう書けばいいのか、随分迷いました。私があれこれ何かを書くよりも、正直、読んで欲しい。そんな思いが強くあります。これほど真摯な言葉が溢れ、言葉以上に真摯な眼差しが世界に注がれる本を読んだのはいつ以来なのか——思い出すことさえできません。死者が自分の中に転生するという言葉にも、私には確かに覚えがあって、思えば私はずっと自分の中に生まれ変わった死者と対話してきたのだと気付かされました。とにかく凄いのひと言しかないです。大事な想いにことばを与えてくれた、そのことにただ感謝です。2023/04/25
なおみ703♪
14
時折開いて、丁寧に言葉の意味をかみしめたい。「読むとは、目に見える文字の奥に不可視な文字を見ることに他ならない」「生者の言葉よりも死者たちの沈黙」「彼女の闘いは、夫を襲う孤独という得体のしれないものとの間に繰り広げられている」「言葉にせずに飲み込んだことに触れたい」「真の手紙はその本性からして、詩的なものである。」「書くとは見えない海を泳ごうと掻くこと」「美の霊気を浴びる、美の霧の中を歩いた。美は名状しがたい波動となって顕現した、美の邂逅であった(大原美術館)」「美は魂の泉であり糧である」2023/05/29
しょうじ@創作「熾火」執筆中。
11
自叙伝的要素の強い作品だが、『群像』掲載時には、河合隼雄論として連載されていたのではなかろうか。単に「読む」ことには収まらない、「魂の交歓」ともいうべき「体験」であったと感ずる。2024/02/06




