内容説明
「天才植物学者」の真の業績とは?
牧野富太郎は、「日本の植物学の父」と呼ばれ、貧窮の中にあって独学で植物分類学を修め、アカデミズムと対峙しつつも、偉大な業績を残し、植物知識の普及に尽力したとされる。しかし、そうした人物像や人間ドラマばかりが脚光を浴び、研究者としての業績はこれまで十分に顧みられてこなかった。命名した植物数や集めた標本の数が定まらないのはなぜか? 研究、普及活動の真価とは? 2023年度前期の連続テレビ小説「らんまん」の植物監修者が、「天才植物学者」の足跡を追いながら明らかにしていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンタマリア
42
社員旅行で高知に行くので予習として読んだ。くそつまらないであろう旅行、視点をいくつか追加して面白いものにできたなら上出来だと期待して読んだ。 追加された視点は想定していたのとはだいぶ違った。世間でよく言われている牧野富太郎を否定したと思ったら、別のベクトルで牧野を讃えたりする。たぶん、著者は牧野富太郎のことが好きで好きでたまらなくて、本当を知ってもらおうとしてこんな文章を書いたのだろうなぁ。 旅行、楽しかった。(追記ではないけど、追記の形をとって)2023/09/03
鯖
29
朝ドラはリアルすえこさんの「私の人生、こんなだったらよかったのに…」という死ぬ間際の走馬灯が見せた夢だと思って見てたんですけど、著者の先生は牧野富太郎が大好きなんだよな…。人間性はクソでも大好きなんだよな…。「金銭感覚のない人間がいたからこそ、その分野は進化を遂げる」東大の出禁等の真偽にも「自叙伝を追うほどに隘路に迷い込む」として疑問を投げかけておられ、植物大好きだったけど一番大好きなのは自分だったんだろうなあとは思っちゃった。被害者意識は強かったんだろな。でもそれでも魅力的な人だったんだろう。 2023/10/01
みこ
29
朝ドラ主人公のモデルである牧野富太郎氏の業績を紹介。とかく人間性や破天荒な人生にばかり焦点が当てられ植物分類学者としての真っ当な評価の歪みにつながりかねないというのが筆者の執筆動機らしい。とはいえ、山林を駆け巡っては植物を採取し、でもその採取した標本はやや雑に扱われるなど、まさに「らんまん」な人間性が滲み出ている。最終章で彼がこのような業績を残せたのは多くの人に愛されたからと書いてある通り結局人間性と実績は完全には切り離せないのだろうと感じた。2023/05/02
さとうしん
16
牧野富太郎の業績もさることながら、日本の植物分類学のあゆみ、ひいては植物分類学自体の良い入門書となっている。牧野の業績については単なる紹介に留まらず、標本の整理をしなかったなどの負の面や、数々の伝説の検証・訂正も行っている。後半生は一般への教育普及活動に力を入れたということで、このあたりは白川静の生涯と似通っているように思う。2023/05/21
じん
9
植物学の専門家が、牧野博士の人物像ではなく、研究分野と研究者としての業績を解説しています。なかなか馴染みがない部分はすんなり読めないですが、なんとなーく分かりました。※終始一貫して日本の植物の記載に徹した牧野太郎の専門性は、日本のフロラ研究であり、中でも日本産植物のインベントリー研究にあったといえるだろうp96※根拠のない数字を並べて称賛することや人間ドラマに必要以上にスポットを当てることはもう十分であろうp207※2023/04/22