路上の陽光

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路上の陽光

  • ISBN:9784863855151

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内容説明

チベット文学を牽引する作家ラシャムジャ。代表作「路上の陽光」をふくむ日本オリジナルの短編集。

日本を舞台にした短編「遥かなるサクラジマ」も収録!

10歳の少年が山で父の放牧の手伝いをしながら成長していく姿を描く「西の空のひとつ星」、センチェンジャの横暴におびえる中学校の教室を舞台に気弱な男子ラトゥクが勇気を持つにいたる「川のほとりの一本の木」、村でたった一人の羊飼いとなった15歳の青年が生きとし生けるものの幸せについて考える「最後の羊飼い」など8作品を収める。

ラサは懐の深い町だ。見た目も言語も異なる様々な民族が、あらゆる通りを川の流れのように行き交っている。(本文より)

【著者】
ラシャムジャ
1977年、チベットのアムド地方ティカ生まれ。チベット語の小説を雑誌等に発表している。現在30?40代のチベットの作家の中で最も注目される一人である。

星泉
1967年千葉県生まれ。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・教授。チベット語研究のかたわら、チベットの文学や映画の紹介活動を行っている。訳書にラシャムジャ『雪を待つ』、ツェワン・イシェ・ペンバ『白い鶴よ、翼を貸しておくれ』、共訳書にトンドゥプジャ『ここにも躍動する生きた心臓がある』、ペマ・ツェテン『ティメー・クンデンを探して』、タクブンジャ『ハバ犬を育てる話』、ツェラン・トンドゥプ『黒狐の谷』がある。『チベット文学と映画制作の現在 SERNYA』編集長。

目次

路上の陽光
眠れる川
風に託す
西の空のひとつ星
川のほとりの一本の木
四十男の二十歳の恋
最後の羊飼い
遥かなるサクラジマ
訳者解説

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

buchipanda3

117
「アーラーイェー ぼくの愛しい人よ 美しいコンボの娘」。現代チベット文学の短篇集。街中で働く若者、牧羊を生業にする少年、チベットを離れた女性など色々な生き方が描かれる。どの話からも暮らしに根付いた宗教観、価値観が仄かに感じられ、近代化と古来的な風味が重なった独自の味わいのある物語を面白く読めた。自然と人生観の結びつき、中でも"風"が印象的。風に吹かれたお経、暴風で再会、心の中で吹く風。プンナムが自転車で風と共に駆ける姿は精霊のようだ。自然には厳しさが伴うが、それでも彼らの純粋な陽気さと健気さが心に残った。2022/05/07

nobi

53
これはさっさと読めてしまう。起きた思った話したをそのまま写し取ったよう。男女の仲の変遷も交わされる軽口も陰影に乏しい感じすらしてしまう。日本なら源氏物語など多くの文学の蓄積が齎す厚みがいかに大きいことなのか。そんな中チベットの自然と大切な動物の描写は身に染みる。日本の新幹線で彼らが見るビジネスマンがそうした世界から如何に隔たってしまっていることか。広大な夏の空、闇の静けさ、読経の声、心の通い合う羊など、敬愛と親しみに満ちている。そんな心温まる風景が一瞬で覆される驚きも。自然も動物も人間に気遣ったりしない。2025/04/01

hiroizm

43
農業と信仰の素朴な社会から現代化へ、急激に変容する社会に翻弄されつつも真摯に生きるチベットの人々を描いた短編集。表題作「路上の陽光」と「眠れる川」の連作二篇は、1950年代に制作された日本の青春映画のような雰囲気で、このところひねくれた屈折気味の現代文学を読んでばかりの身には直球勝負感が逆に新鮮。また全体的に自然描写が美しく味わい深い。初恋同士の男女が時を経て再会する「四十男の二十歳の恋」もなかなかオツで面白かった。2022/07/22

ケイティ

37
初めてのチベット文学。連作含む短編集ですが、川の流れや強烈な陽射し、乾いた土地などチベットの空気感がどの作品にも溢れていて、壮大な長編を読んだかのような力強さがありました。作品もどれ一つ埋もれずそれぞれ際立っていて、登場人物たちも知っている人たちのように生き生きと描かれています。全体を通してラシャムジャさんの誠実さ、情熱が押し寄せてくるようで、いい作品に出合えたなぁと、純粋に楽しく没頭できる読書でした。星さんの訳も作品と一体感があり、とても良かったです。2024/03/23

ねむ

30
チベットの作家による短篇集。訳者あとがきによるとチベット語の現代文学が本格的に始まったは1980年前後とのことで、いま50代ぐらいの作家が中心的存在とのこと。この本の作者ラシャムジャは77年生まれ。どこか切なく、厳しく、苦く、でも透明感のある作風は高地の空気を思わせる。純粋無垢なばかりではない、雑踏のような不安な圧迫感や、変わりゆく社会と個人の軋轢みたいなものが描き出されていると思った。最初の二作が連作なので連作短篇集かと思ったが、連作はこの二作のみで、実はあと一作加わって三部作になる予定だそう。2023/03/16

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