たましひの薄衣

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たましひの薄衣

  • 著者名:菅原百合絵【著】
  • 価格 ¥2,090(本体¥1,900)
  • 書肆侃侃房(2023/03発売)
  • ポイント 19pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784863855618

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内容説明

満を持して刊行される、菅原百合絵待望の第一歌集。

ほぐれつつ咲く水中花――ゆつくりと死をひらきゆく水の手の見ゆ

人間が荒れ狂う今世紀にこのような美しい歌集が生まれたことをことほぎたい。(水原紫苑)

静謐で深い歌の探求が続けられていたことに胸を打たれる。(野崎歓)

【収録歌より】

ネロ帝の若き晩年を思ふとき孤独とは火の燃えつくす芯

たましひのまとふ薄衣(うすぎぬ)ほの白し天を舞ふときはつかたなびく

水差し(カラフ)より水注(つ)ぐ刹那なだれゆくたましひたちの歓びを見き

一生は長き風葬 夕光(ゆふかげ)を曳きてあかるき樹下帰りきぬ

【著者】
菅原百合絵
1990年生まれ。東京出身。「東京大学本郷短歌会」「パリ短歌クラブ」元会員(現在いずれも解散)。「心の花」会員。パリ・シテ大学(旧パリ第七大学)博士課程修了。専門は18世紀フランス文学。

目次

Ⅰ Figures sans figure
声の静寂
L,amante   venir
シレーヌの歎息
渡河
水際の窓
想念の湖

Ⅱ S r nit 
記憶の舫
水差し
光を漁る
静かの海
レテ河の舟

Ⅲ 祷るひと
存在の黄昏
Clair de lune

Ⅳ 静物画の日々
風の痕跡
夜の沈思
Partir, c,est mourir un peu
青海波
  chacun sa solitude
マキャヴェリの孤独
昼のテラス
不在の在
オルフェウスの弦
ナイト・プール
花咲く乙女たち
禁色

あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

松本直哉

31
禁じられていても、禁じられているからこそ、人は命をかけてでも、言葉を紡がずにはいられない。命がけの言葉は、人が死んでも、書物が焼かれても、木の葉のそよぎのように、人間の耳にはとらえられないかたちであれ、生き続けるだろう。文学研究にたずさわる著者は、滅ぼされていった言葉、しかし、かすかな風のそよぎのなかにわずかに生きながらえるその痕跡とでもいえるような言の葉に、耳を澄ませることを、自らの使命と考えているのかもしれない。稀覯書を探し求めてほの暗い書庫に足を踏み入れる著者の自画像には、そのような思いが垣間見える2023/04/14

あや

25
短歌同好の仲間に奨められて読む。著者は18世紀フランス文学専攻。そのエッセンスが繊細に詠まれて、著者ならではのオリジナリティとなっている。   をさな子に鶴の折り方示しをり あはれ飛べざるものばかり生む/目が合ひて逸らせばやがて舟と舟ゆきかうやうにさざなみ来たる/方舟に乗せられざりき生きものの記憶を雨の夜は運び来/光さす方へと人は歩みゐてコローの描きし森午後ならむ/渡されしカメラもきみのまなざしの容れものでありそつと抱きとる2024/05/10

あきあかね

21
 「母語は自分に近い「本当」の言葉で、外国語は後から学んだ「借り物」の言葉のように思えるが、実はその「借り物」の言葉こそが、まさにそのよそよそしさゆえに、心のもっとも奥ふかくに秘匿されている自己をー無惨なまでにーにあらわにするのだった。(略)それは決して光降りそそぐ明るい場所ではないけれども、そのようなほのぐらい場所を自分のうちに見出し、認めるのは、不思議と静かな慰めを与えてくれる経験でもある。」 今年の東京大学の国語の入試問題で、まだ三十代前半の若きフランス文学者が著した、外国文学、外国語を学ぶ⇒2024/03/24

双海(ふたみ)

15
すごくいい歌集だと感じた。作者は1990年生まれ。「本郷短歌会」「パリ短歌クラブ」などを経て「心の花」会員。栞文は水原紫苑、野崎歓、星野太の各氏。「雪なりし記憶持たねど氷片を置けばグラスに水のさざめき」「魂は水の浅きをなづさへりうつし身ゆゑにゆけざるところ」「水面から飛花が水底へとしづむ神のまばたきほどの時の間」端正な文語定型が輝く歌集。2023/05/29

ゆう

13
大切な人に贈りたくなる歌集だった。題名の通り、たましいの透明さ、光、水、風など不可視・不定形のものの美しさを歌った作品が多く、毎晩少しずつ読むのを楽しみにしていた。癒される。文語体は馴染みがないので文法を調べながら読んだのだけど、気持ちが落ち着くのは歌の作風なのか文体なのか。歌人はフランス文学を学んでいたそうで、だからエピグラフや前書きにフランスの偉人が多かったのかもしれない。2023/04/27

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