内容説明
慶応三年、新政府と旧幕府の対立に揺れる幕末の京都で、若き尾張藩士・鹿野師光は一人の男と邂逅する。名は江藤新平――後に初代司法卿となり、近代日本の司法制度の礎を築く人物である。二人の前には、時代の転換点ゆえに起きる事件が次々に待ち受ける。維新志士の怪死、密室状況で発見される刺殺体、処刑直前に毒殺された囚人――動乱の陰で生まれた不可解な謎から、論理の糸は名もなき人々の悲哀を手繰り寄せる。破格の評価をもって迎えられた第12回ミステリーズ!新人賞受賞作を含む、連作時代本格推理。第19回本格ミステリ大賞受賞。/【目次】佐賀から来た男/弾正台切腹事件/監獄舎の殺人/桜/そして、佐賀の乱/解説=末國善己
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
麦ちゃんの下僕
147
さすが第19回本格ミステリ大賞受賞作…抜群の面白さでした!5編から成る連作短編集ですが、それぞれ「WHO」「HOW」「WHY」「倒叙」「冤罪」という趣向の異なるミステリーになっていて飽きさせませんし…何よりメインの2人=“維新の十傑”に数えられる江藤新平&架空の尾張藩士・鹿野師光の“肩書き”や“関係性”、そしてどちらが“探偵役”を務めるのかも毎回変わっていくというのが実にユニークですよね!2人の出会いから「佐賀の乱」へと至る“人間ドラマ”としても読み応えがありますし…これがデビュー作とは恐れ入りました!2023/08/16
オーウェン
61
幕末の京都藩士の鹿野師光は後に司法卿となる江藤新平と出会う。 だが時代の転換期、多くの事件が謎として二人を悩ませる。 時代劇ミステリであるが、二人いるからホームズとワトソンとはならない。 むしろ上昇志向の新平と部下の鹿野の違いが、事件と共に徐々に亀裂が入ってくる。 全5章の中で4つ目の話で決定的に袂を分かち、最後の章で二人が直接事件として関わりあう。 構成も上手いし、時代劇なのが意味があるミステリ。 2024/01/11
goro@the_booby
54
新しいものを読んだ気がする。明治維新直後から始まる混沌とした時代に生きる二人。司法権を統一するという野心に燃える江藤新平と生きる糧をなくしそうな鹿野。冴えわたる推理で解決してゆく連作短編。コロンボ「ロンドンの傘」のような仕掛けまで駆使して己のために事件を操る江藤にうんざりする鹿野だが、互いに切れすぎて哀しい。史実を交えて創作し江藤新平像を立ち上げた作者の力量に感服でございます。これは前日譚となってる次も読まねばなるまい。追いかけなければならない作家伊吹亜門です。 2024/09/12
森オサム
41
著者初読み。第19回本格ミステリ大賞受賞作。文体が私には合わずとても読み辛かった。その上難しい漢字(人名含めて)が多かったからか、探偵役二人に好感が持てなかったからか、読了には時間が掛かった。本格ミステリとしてはバラエティに富んでいて、動機の解明や密室トリック等さすがに上質で有ったと思います。二人の関係性の変化から衝撃的なラストまでの流れはドラマ的に深みが有りましたが、個人的には探偵がズバズバ事件を解決して行く方が、今読みたい作風だったのかも知れません。と言う訳で、タイミングが悪かったのか?、残念な作品。2024/06/09
シキモリ
27
日本の司法制度の礎を築いた江藤新平(実在の人物)と尾張藩出身の武士・鹿野師光のバディが京都で発生する殺人事件の謎を解き明かす連作ミステリー短編集。所謂【本格ミステリ】と呼ばれる作品は犯行動機が説得力を欠くイメージが強いのだが、動乱渦巻く幕末~明治時代が舞台となると、決して有り得なくはないかと思わせる設定の妙がある。全編を通して、江藤と鹿野の関係性が変化してゆくのも面白い。後半になるにつれて物語の筋書きがパワーダウンしているのが惜しまれるが、悲哀に満ちた最終回の余韻といい、他の作品も読みたいと思わせる作家。2023/12/21
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