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内容説明
1980年に当時の大平正芳首相のもと、当代一流の知を結集してつくられた「田園都市国家構想」。それは人間的で文化的な国家を目指すすぐれた長期的国家ビジョンであった。その構想の原点となったエベネザー・ハワードの田園都市構想、それを発展させた農政学者・柳田国男による知られざる日本独自の分権的田園都市構想を検証。大平構想にあった家庭や地域コミュニティ、自然や文化の回復、そして国家と都市、地方が調和して発展するというビジョンを21世紀に再生させる試み。
目次
はじめに/序章 いまなぜ田園都市国家構想なのか/大平構想という長期的国家ビジョン/政府の経済政策と長期的ビジョンの不在/哲学のある長期ビジョンへ/思いつきではなかった大平構想/第一章 大平正芳の田園都市国家/1 哲人政治家とブレーンたち/哲人政治家・大平正芳の生涯/楕円の哲学/ブレーンたち/2 報告書『田園都市国家の構想』/大平正芳の理念/報告書の歴史的背景/報告書の思想/3 報告書が示す具体策とその限界/「多極重層構造」の田園都市国家/さまざまな具体策/限界/家庭基盤の充実構想との関連/4 田中角栄『日本列島改造論』との比較/競合関係にあった大平構想と田中構想/哲学の違い/第二章 E・ハワードの田園都市/1 「原点?」としての江戸期日本/川勝平太の推測/渡辺京二『逝きし世の面影』の日本──実像か幻影か/2 構想と実現──レッチワースなど/労働者の劣悪な生活環境への視線/『明日の田園都市』に見るハワードの思想と構想/「ユートピア」の実現/3 J・ジェイコブズの批判──「計画」か「多様性」か/都市計画の拒否/出会い・ふれあいの場としての歩道/多様性にあふれた街/都会の偏愛と田舎の蔑視/4 日本への導入/内務省『田園都市』/高級住宅地と「阪神間モダニズム」/何が問題とされてきたのか/第三章 柳田国男の田園都市国家/1 ハワードと内務省の田園都市構想への賛同と反発/ハワードらの構想との複雑な関係/「中農養成策」と『時代ト農政』──賛同/『都市と農村』──反発/2 『都市と農村』の理想と現実(I)/農村文化の称賛/都市文化の嫌悪/3 「地方文化建設の序説」への寄り道/都会人の「噴火口上の舞踏」/メタファーとしての「消費」と「生産」/4 『都市と農村』の理想と現実(II)/農民の自尊心の喪失/日本農業の「三つの希望」と現実/5 「中農養成策」の 末/生産性向上のための「中農」と「幸福なる小工業」/柳田改革構想に立ちはだかる農業保護主義/6 柳田の自然観/「科学の対象としての自然」/自然のなかにある人間への関心/「家の宗教」の保守/7 柳田から見た『田園都市国家の構想』/柳田と大平の共通点/自然観の違い/地方経済活性化の問題/8 柳田から見た『家庭基盤の充実』/基本としての家族愛/つながりがつくる「永遠の生命」/現代人の時間意識と死の恐怖/9 時代的制約を超えて/「農村文化」「地方文化」をいかに受け継ぐか/「ケ・ケガレ・ハレ」のリズムがもたらすもの/「地方文化」の再生のために/第四章 二一世紀の田園都市国家/1 穏やかな経済成長/「ゼロ成長論」への疑問/経済成長への途/2 家庭、地域コミュニティ、自然への配慮/家庭と地域コミュニティの回復/「よい自然」と「わるい自然」/3 「地方消滅」と人口減少の危機への対応/「増田レポート」の衝撃/「地方再生」への取り組み/行政的施策としての「選択と集中」/東京一極集中からの反転攻勢/絶望の必要はない/4 AIとITに負けない田園都市国家/AIの進化と限界/AI・ITとともに生きる/AI信仰からの脱却──「常識」の役割/5 田園都市国家の総合的安全保障/『総合安全保障戦略』の先見性/「武勇の精神」の故郷としての「農」と「田園」/補章 コロナ、そして死とともにある時代に/1 史上最大級のパンデミック/コロナ禍という出来事/反グローバリズムの危うさ/集権国家の誘惑/テレワークと地方分散/2 生と死を見つめて/「死を遠ざけること」の不幸/「死の認識」へ/『葉っぱのフレディ』という「いのち」の物語/コロナウイルスとともに/参考文献
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