ちくま新書<br> よみがえる田園都市国家 ──大平正芳、E・ハワード、柳田国男の構想

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ちくま新書
よみがえる田園都市国家 ──大平正芳、E・ハワード、柳田国男の構想

  • 著者名:佐藤光【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2023/03発売)
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  • ISBN:9784480075451

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内容説明

1980年に当時の大平正芳首相のもと、当代一流の知を結集してつくられた「田園都市国家構想」。それは人間的で文化的な国家を目指すすぐれた長期的国家ビジョンであった。その構想の原点となったエベネザー・ハワードの田園都市構想、それを発展させた農政学者・柳田国男による知られざる日本独自の分権的田園都市構想を検証。大平構想にあった家庭や地域コミュニティ、自然や文化の回復、そして国家と都市、地方が調和して発展するというビジョンを21世紀に再生させる試み。

目次

はじめに/序章 いまなぜ田園都市国家構想なのか/大平構想という長期的国家ビジョン/政府の経済政策と長期的ビジョンの不在/哲学のある長期ビジョンへ/思いつきではなかった大平構想/第一章 大平正芳の田園都市国家/1 哲人政治家とブレーンたち/哲人政治家・大平正芳の生涯/楕円の哲学/ブレーンたち/2 報告書『田園都市国家の構想』/大平正芳の理念/報告書の歴史的背景/報告書の思想/3 報告書が示す具体策とその限界/「多極重層構造」の田園都市国家/さまざまな具体策/限界/家庭基盤の充実構想との関連/4 田中角栄『日本列島改造論』との比較/競合関係にあった大平構想と田中構想/哲学の違い/第二章 E・ハワードの田園都市/1 「原点?」としての江戸期日本/川勝平太の推測/渡辺京二『逝きし世の面影』の日本──実像か幻影か/2 構想と実現──レッチワースなど/労働者の劣悪な生活環境への視線/『明日の田園都市』に見るハワードの思想と構想/「ユートピア」の実現/3 J・ジェイコブズの批判──「計画」か「多様性」か/都市計画の拒否/出会い・ふれあいの場としての歩道/多様性にあふれた街/都会の偏愛と田舎の蔑視/4 日本への導入/内務省『田園都市』/高級住宅地と「阪神間モダニズム」/何が問題とされてきたのか/第三章 柳田国男の田園都市国家/1 ハワードと内務省の田園都市構想への賛同と反発/ハワードらの構想との複雑な関係/「中農養成策」と『時代ト農政』──賛同/『都市と農村』──反発/2 『都市と農村』の理想と現実(I)/農村文化の称賛/都市文化の嫌悪/3 「地方文化建設の序説」への寄り道/都会人の「噴火口上の舞踏」/メタファーとしての「消費」と「生産」/4 『都市と農村』の理想と現実(II)/農民の自尊心の喪失/日本農業の「三つの希望」と現実/5 「中農養成策」の 末/生産性向上のための「中農」と「幸福なる小工業」/柳田改革構想に立ちはだかる農業保護主義/6 柳田の自然観/「科学の対象としての自然」/自然のなかにある人間への関心/「家の宗教」の保守/7 柳田から見た『田園都市国家の構想』/柳田と大平の共通点/自然観の違い/地方経済活性化の問題/8 柳田から見た『家庭基盤の充実』/基本としての家族愛/つながりがつくる「永遠の生命」/現代人の時間意識と死の恐怖/9 時代的制約を超えて/「農村文化」「地方文化」をいかに受け継ぐか/「ケ・ケガレ・ハレ」のリズムがもたらすもの/「地方文化」の再生のために/第四章 二一世紀の田園都市国家/1 穏やかな経済成長/「ゼロ成長論」への疑問/経済成長への途/2 家庭、地域コミュニティ、自然への配慮/家庭と地域コミュニティの回復/「よい自然」と「わるい自然」/3 「地方消滅」と人口減少の危機への対応/「増田レポート」の衝撃/「地方再生」への取り組み/行政的施策としての「選択と集中」/東京一極集中からの反転攻勢/絶望の必要はない/4 AIとITに負けない田園都市国家/AIの進化と限界/AI・ITとともに生きる/AI信仰からの脱却──「常識」の役割/5 田園都市国家の総合的安全保障/『総合安全保障戦略』の先見性/「武勇の精神」の故郷としての「農」と「田園」/補章 コロナ、そして死とともにある時代に/1 史上最大級のパンデミック/コロナ禍という出来事/反グローバリズムの危うさ/集権国家の誘惑/テレワークと地方分散/2 生と死を見つめて/「死を遠ざけること」の不幸/「死の認識」へ/『葉っぱのフレディ』という「いのち」の物語/コロナウイルスとともに/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

不純文學交遊録

9
時期的に岸田文雄内閣が提唱するデジタル田園都市国家を想起させるが、本書の骨子は三年以上前に書かれたものであり、1980年に大平正芳内閣が発表した田園都市国家構想の先見性を再評価するものである。原典であるハワードの『明日の田園都市』や、大平の盟友でライバルだった田中角栄の『日本列島改造論』との相違などを論じ、精神面を補うものとして柳田国男の『都市と農村』を読み解く。「アーウー」しか知らなかった者にとって、読書家で哲人政治家と敬慕された大平の人物像と、九つの政策研究会による長期的国家ビジョンに驚かされた。2023/06/05

ヨムヒト

6
岸田総理のデジタル田園都市国家構想のStudy中、本書を手に取った。歴史を掴める。都市に生きた先輩方が田園を渇望したことが伺い知れる。 1866年に江戸を訪れた外国人が田園と都市の見事な融合に驚いた所から始める。その後ハワードが田園都市を温めて、その最中ジェイコブス女史が批判したりして、明治の日本に逆輸入。1930年に内閣府有志が田園都市なる書籍を執筆。柳田国男も色々コメント。1971年に大平総理が田園都市を打ち出し、2016年にはSociety 5.0が出て、20年にデジタル田園都市国家構想に至った。2023/06/08

sk

4
何度も提唱されながらなかなか実現しない田園都市国家。2023/06/04

古谷任三郎

4
昨今岸田政権がデジタル田園都市国家構想を掲げているが、その元となった大平正芳の田園都市国家構想と、さらにその元となったハワードの田園都市構想、柳田國男の田園都市に対する考察に光を当てている一冊。筆者は大平、ハワード、柳田の構想の良い点と悪い点を細かく記述しているが、後半の章に続くと哲学的かつ宗教的な言及が多くなってる印象を抱く。大平もキリスト者だし、ハワードの田園都市構想もユートピア的色彩が強く、柳田も民俗学者であるから宗教とは切っても切り離せない。だが田園都市国家構想にもっと深掘りして欲しかった。2023/04/15

うえぽん

3
大平の田園都市国家構想を、その淵源であるハワード、内務省地方局の著作や、柳田国男の思想で補助線を引いてその理解を助け、最後に現代に求められる田園都市国家構想を論じている。不得意分野(AIやIT等)についての記述が不十分で、家・家族中心主義的な記述にやや懐古主義の側面を感じ、人口、経済関係の論述に甘さはあるものの、意外なほど全体としてはバランスの取れた著作と感じた。ただ、明治30年ごろの内務省地方局の面々の考えを富国強兵の先兵であるかのように一刀両断にしているのは、やや短絡的、主観的に過ぎるかもしれない。2023/03/17

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