オーウェルの薔薇

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オーウェルの薔薇

  • ISBN:9784000615662

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内容説明

ジョージ・オーウェルが一九三六年に植えた薔薇の生き残りとの出会いから,見過ごされてきた彼の庭への情熱に光をあて,精神の源を探るソルニット.豊かな思索の旅は,オーウェルの人生とその時代から,化石燃料としての石炭,帝国主義や社会主義と自然,花と抵抗をめぐる考察,薔薇産業のルポ等を経て,未来への問いへと続く.

目次

Ⅰ 預言者とハリネズミ
1 死者の日
2 フラワー・パワー
3 ライラックとナチス
Ⅱ 地下にもぐる
1 煙,頁岩,氷,泥,灰
2 石炭紀
3 闇のなか
Ⅲ パンと薔薇
1 薔薇と革命
2 私たちは薔薇を求めてもたたかう
3 讃えるもの
4 バタートースト
5 昨日の最後の花薔薇
Ⅳ スターリンのレモン
1 燧石の小路
2  の帝国
3 レモンを強いること
Ⅴ 隠棲と攻撃
1 囲われた土地
2 上流階級
3 砂糖と芥子とチーク材
4 オールドブラッシュ
5 悪の華
Ⅵ 薔薇の値段
1 美の問題
2 薔薇工場にて
3 水晶の精神
4 薔薇の醜さ
5 雪と墨
Ⅶ オーウェル川
1 喜ばしきことどもの明細目録
2 「ローズヒップと薔薇の花」
3 オーウェル川
謝辞
訳者解説1 『オーウェルの薔薇』と自然の主題
訳者解説2 そぞろ歩きの「オーウェル風」
写真クレジット

索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アキ

108
1936年英国ウォリントンの庭にオーウェルは薔薇の苗木を植えた。彼の趣味はガーデニングだった。著者は2017年にその庭を訪れて、その薔薇が今でも存在することを知り、感動を覚える。薔薇という植物を足掛かりに、オーウェルの著作からの文章を引き合いに出し、政治、文化、産業、文学論を展開する。ディストピア小説「1984」で主人公ウィンストン・スミスは黄金郷を夢で登場させ、ジュリアとの愛の象徴の場所とした。前著「ウォークス」と同様に著者のエッセイは蛇行する川のように流れて、その川幅の広さに感嘆する。2023/02/12

kaoru

78
『1984年』『動物農場』で有名なオーウェルの生涯を紐解き、彼の愛した薔薇を通じて西欧の諸問題を考察する著書。ソルニットは囲い込みが誘発した産業革命の弊害、スペイン内戦、薔薇の写真で有名な女流写真家モドッティ、帝国主義、英支配階級と大西洋の奴隷貿易、コロンビアの薔薇工場など西欧社会の断面を切り取りつつオーウェルの人生を追う。結核を患いながら全体主義を鋭く批判した彼は晩年にジュラ島に移住しそこで薔薇など様々な植物を植えて楽しんだ。「現代の世界は、美しく見えても忌むべき手段で作り出されたものにあふれている」→2023/01/05

syaori

69
”オーウェルが庭に薔薇を植えた”という一事から展開してゆく本。筆者は、彼の人生や薔薇の周りを逍遥しながら、彼が庭仕事や四季の移ろいを見守るといった「数量化しにくいけれどもずっと大切なもの」を、また明晰さや正確さや正直さを愛したことを語ります。つまりそれは、「対象がありのままに表象され、知識が民主化され」プライバシーが守られという、真実を歪めることも辞さない全体主義や権威主義が広まる当時の世界のなかで、彼がそれに抵抗する力として愛し守ろうとしたものについてで、私もできるだけそれを守っていければと思いました。2025/05/20

ケイトKATE

50
「抵抗する作家」のイメージが強いジョージ・オーウェルが、ガーデニングを趣味としていたのと薔薇を育てていたのは意外であった。オーウェルとって薔薇をはじめ植物を育てることは、戦争の時代を生きたオーウェルの癒しの時間であった。一方、レベッカ・ソルニットは薔薇が太古から現代まで人間を魅了し続け、魔力にもなって人間を翻弄していると指摘している。ソルニットは、オーウェルの薔薇をきっかけとして、人間が自然との触れ合いが思考を広げる役割を果たしていることを教えてくれる。飛躍した文章はあるが、示唆に富んだ作品である。2022/12/10

フム

31
2年も積読にしていた本をやっと読むことができた。本を読む楽しみが全て詰まっていると思えるような読書だった。知らなかった事物について知って驚くこと。もっとそれらを知りたくなること、読みたい本が芋づる式に増えること。生きる上で何を求めていくか考えさせられること。 自分の住処の庭に薔薇の苗木を植えたひとりの作家というのを出発点に、オーウェルの生涯と仕事についてソルニットならではの視点で考察していて面白かった。 2025/01/09

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